NFTにおける「説明困難な」ファンジブル論争について
はじめに
現在、NFTは確実に主流になりつつあります。これは、クリエイターが報酬を得るための方法を増やす素晴らしいニュースです。そして、ブロックチェーンの導入を促進するためにも同様です。
しかし「NFT」というラベルには、フラストレーションが溜まるが、決して解決不可能ではない問題があります。まずは、オタクが大好きな「UFO」の例えから始めていきましょう。
「説明困難な」UFOの目撃情報があるように、NFTにも「説明困難な」ファンジビリティの目撃情報があります。例えば、RACのTAPEトークンは「NFT」なのか?Unisocksは?限定版NFTはどうでしょうか?互換性があるように見えますがERC1155は、ファンジビリティをサポートしていることから「NFT」なのでしょうか?
このエッセイでは、これらの疑問を探ります。そして、私を含めたオタクたちの不満を解消し、あまり探求されていない機会への扉を開くことを願って、ささやかな解決策を模索していきます。
“non-fungible “の “fungible “について
RACは、NFT領域で活動しているグラミー賞受賞の音楽家です。2020年初頭に$TAPEをリリースしました。このTAPEトークンは100個存在します。
そのうち1個をRACのアルバム「BOY」の物理的なカセットテープ1本と交換することができます。1TAPEは現在$4200で取引されており、史上最も高価なカセットテープとなっています。
これは“NFT “でしょうか?
1TAPEは、他のTAPEトークンと交換することができます。これこそが、ファンジブル(ノンファンジブルではない)の定義なのです。ふむふむ。
さらに、TAPEはERC20で実装されています。これは偽造可能なトークン(偽造できないトークンではない)の標準です。
そして、TAPEの一部を交換することもできるのです。これは”NFT”?🤔
ティッカーが$SOCKSであるUnisocksを考えてみましょう。SOCKSトークンは500存在します。そのうちの1個をちょうど1足の物理的な靴下と交換することができます。1 SOCKSは現在86Kドルで取引されており、ピーク時は164Kドルでした。1足の靴下が実物のTeslaと等価交換できるのです。
Mike Demarais氏は、自称SOCKS shillです。
Unisocksについては、こんな風に考えています。19世紀から20世紀初頭にかけて、Fabergé eggの彫刻はロシアの王族が求める貴重な美術品として扱われ、69個しか作られませんでした。暗号のバイアスが陽気さとミーム性にあることから、Unisocksは暗号コミュニティが求める21世紀の貴重なアートピースとして登場しました。Unisocksは暗号分野のFabergé eggであると言えます。
NFT ですよね?SOCKSはERC20に実装されていて、ファンジブルトークン(ノンファンジブルではない)の標準規格ですね。
限定版NFTはどうでしょうか。NBA Top Shot NFTの「Damian Lillard Dunk” NBA Top Shot NFT」を考えてみましょう。6種類のエディションが存在します。固有のシリアルナンバーがあるかもしれませんが、そのナンバーは特に重要ではありません。これらのNFTは別のものと交換することができます。これは「交換可能」という意味です。
ERC1155トークンの規格を考えてみましょう。1つのトークンをミントした場合、それは1つだけなので偽造できません。しかし、2つ目のトークンをミントすると、それはファンジブルになってしまいます。
解決策は?
では、TAPEやSOCKSは「NFT」なのか、そうでないのか。また、「限定版NFT」やERC1155はどうするのでしょうか?
「ブロックチェーン」が普及し始めた2014年から2015年にかけて、ある特定のシステムが「ブロックチェーン」であるかどうか、多くの人が議論しました。ビットコイン・マキシマリストたちは「ビットコインだけがブロックチェーンだ」と言います。また「ブロックの連鎖である」(ブロックNがブロックN-1のハッシュを保存する)とか、「リーダーのいない複製されたデータベースである」(BFT、PoW、PoSなどのコンセンサスプロトコルを使用する)といった、より寛容な定義をする人も存在しました。
これらの議論は、それ自体を解決するものにはなりませんでした。むしろ、「ブロックチェーン」が一つの分野のように扱われるようになるにつれ、そんな議論は衰退していきました。つまるところ、定義がメタ化したのです。大きな後押しがあったわけではなく、ただ単に、自然に起こったことなのです。
つまり現在、「ブロックチェーン」には2つの意味があります:
- ブロックの連鎖や複製などを含むデータベースのような成果物の技術的な定義
- その技術を応用している分野やムーブメント
2.の存在を理解することで議論が中和されると共に、むしろ1.に関する新しいアイデアの扉を開くことに繋がります。
「AI」も同じです。かつては私も含めた技術オタクの間で、あるものが「AI」であるかどうかについて、大きな論争がありました。しかし、AI分野の広まりと共に、今では「AI」は2つの意味を持っています。
技術的な定義(多くの議論があります!)と分野です。
ささやかな解決策
「ブロックチェーン」も「AI」も技術的な定義と、分野別の定義があって初めて成立するものです。NFTでも同じことが言えます。技術的な定義と、分野の定義を分けて考えましょう。後者はブロックチェーンのサブフィールドであり、更に掘り下げると実際には2つのサブフィールドがある事が解ります。1つは創造的な部分をカバーし、もう1つは不変性をカバーします。それをまとめてみましょう。
※NFT (複数形)の定義です
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
NFT定義1:ユニーク・スノーフレーク規格
ユニーク・スノーフレークのトークン規格とは、相互交換できないトークン規格であり、ERC721が最も有名な例です。Ethereumに限らず、Bitcoinやその他のブロックチェーン上の規格も当てはまります。
なお、ここでは意図的に「non-fungible」という言葉を使わないようにしています。
また、ユニーク・スノーフレークトークンにはERC1155も含まれます。
NFT定義2:クリエイティブワークの為のブロックチェーンサブフィールド
これはデジタルアートやフィジカルアート、写真、音楽など、一般的に言われる知的財産(IP)を創出するクリエイティブな仕事に関わる全てのブロックチェーンの仕事を含みます。
つまり、ユニーク・スノーフレーク規格を使用することもできますが、必ずしもその必要はなく、ERC20やその他の規格を使用することもできます。
これにより、私たちのコアとなる課題が解決されます:
- $TAPE(音楽)は、このNFTの定義に適合します
- $SOCKS(フィジカルアート)も適合します
- 「限定版NFT」にも適合します
- ERC1155で1回以上ミントされたトークンも適合します
NFTの定義3:ユニーク・スノーフレーク規格を用いたブロックチェーンのサブフィールド
この第3の定義は、不動産や金融のサプライチェーン(例:Centrifuge)など、クリエイティブ領域ではないERC721などを使用するブロックチェーンアプリケーションを含むものです。また、クリエイティブなERC721を使用するアプリケーションも対象としているため(2)と部分的に重なる部分がありますがそれは問題ありません。
次の画像で説明します:
おわりに
このエッセイは、SOCKSから “限定版 NFT”まで、NFTに見られる “説明困難な “偽造性という苛立たしい課題から始まりました。そして、最終的にささやかな解決策を提案しました。それは、”NFT”が単なる技術標準ではなく、一つの分野であることを認めるということです。このフレームワークは、少なくとも私にとってフラストレーションを解消してくれます。
最後になりましたが、今後のNFTにもご期待ください…。