Amarok AMB アップデート:Connext Network
今年初頭に、Amarokネットワークアップグレードの開発とテストネットを発表しました。このアップグレードは、現在Connextに存在する重要な問題の修正を目的とし、任意のメッセージパッシングのサポートを導入し、開発者のネットワーク統合を簡易化し、表現力のあるxchain(クロスチェーン)アプリケーション(xapps)を構築できるようにするものです。
Amarokアップグレードのリフレッシャー
Amarokのアップグレードは、ブリッジングスタックのモジュール化によって、上記のことを実現します。xappsを構築するために必要な機能を単一のシステムで実現するのではなく、単一の機能(xcall)を呼び出して、リキッドレイヤー(Connext)とメッセージングレイヤー間で動作を分担する仕組みです。
ブリッジのセキュリティモデルのトレードオフを徹底的に調査した結果、Optimistic Bridgeモデルを採用するNomadとの連携を選択しました。
Nomadへの攻撃
そのNomadは最近、実装のバグ(Optimisticモデルとは無関係)により攻撃を受けました。
Connextチームにとって、Nomadがブリッジ分野で最高のチームであるという確信に変わりはなく、むしろこの出来事の結果、さらに強固なシステムとなることに期待しています。また、Nomadのセキュリティモデルの強さから、Optimistic Bridgeが将来的なブリッジメカニズムの主流になるであろうという確信も持ち続けています。
一方、現実的な部分に目を向けると、Nomadが資金を回収して、システムを再起動させるには時間がかかることが想定されます。
Connextチームでは、150台以上のルーター、10数社のdAppチーム、数万人のユーザーがAmarokのアップグレードを待っているため、これを待つ余裕がありません。
新たなメッセージングシステム
以上を踏まえ、当初のスケジュールの遅延を最小限に抑えるための代替アプローチを考え出しました。
このシステムでは、独自のインフラの構築の代わりに、ロールアップやサイドチェーンの既存のAMBを使用してメッセージを中継し、相互接続するコネクターシステムを使用します。このメッセージングシステム全体は、チェーン間でのトークンの送受信を可能にする既存のAmarok流動性レイヤーの下に存在するものとなります。
💡 AMB(Arbitrary Message Systems)は、他のチェーン(L2やL1)がメインネットワーク(通常Ethereum)と接続するために使用される標準的なブリッジです。例として、Arbitrum-EthereumロールアップブリッジやPolygon-Ethereum PoSブリッジがあります。
ハブ&スポークモデル:任意のチェーン上で作成されたトランザクションは、マークルルートに追加され、このルートは定期的にEthereum L1へ送り返される。L1に到達すると、Gelatoボットがルートを集約し(各チェーンのルートを組み合わせて新しいルートを生成)、伝播されます(AMBを介して各チェーンに返送)。
緊急時には、L1システムによってチェーンを切断できます。これにより、ネットワークの他の部分に影響を与えることなく、チェーンに関連するメッセージを停止させることができます。
ユーザーにとってどのような影響があるのか?
Connextの主な設計目標は、プロトコル、ユーザー、ルーター、開発者などの利害関係者にできるだけ影響を与えないことでした。これは、システムの実装に必要な時間と、コミュニティへの影響の両方を軽減するためのものです:
- プロトコルに変更はありません:このシステムは、Nomadと同じインターフェースでメッセージのディスパッチと処理を行います。つまり、オンチェーンコントラクトとオフチェーンエージェントは、新たなメッセージングシステムに変更することなく使用できます:
- 開発者に変更はありません:開発者が統合するインターフェースや機能は、全く同じです。
- 流動性プロバイダーに変更はありません:ルーター(アクティブ流動性)またはユーザー(各チェーンのAMMへのパッシブLP)として流動性を提供する仕組みも、全く同じままです。
しかしながら、Optimistic Bridgeを直接使用することに対して、新しいシステムにはいくつかのトレードオフがあります:
- コスト面−ルートをEthereum L1を通じて伝搬させる必要があるため、若干のコスト増が発生します。現時点では、このコストはConnextにより補助されます。現状のガスコストはかなり低いので、短中期的にはこれで問題ないと考えています。
- レイテンシー−ユーザートランザクションとxchainコントラクトの呼び出しにかかる時間はこれまでと同じで〜2分程度です。一方で、認証された「スローパス」xchainコントラクトコール(関数呼び出しに何らかの許可を得たアクセスが必要なもの)には時間がかかるようになります。以前のレイテンシは〜30分でしたが、〜2、3時間になると推定しています。
- 信頼の最小化−このシステムの優位点は、各チェーンの既存のAMBを利用することです。AMBは既に特定のチェーン/ロールアップ上の資産の信頼の源として機能しているため、追加の信頼前提を最小限に抑えることができます。しかし、Optimistic Rollupsでは「スローパス」出口のレイテンシーを1週間から大幅に短縮する必要があります(Acrossの仕組みと同様)。ロールアップはまだセキュリティのための保護されたアプローチに大きく依存しており、ロールアップのシーケンサーによって不正が発生した場合、システムはロールアップを切断することができるため、これは現時点では許容できる信頼のトレードオフになると予想しています。
- チェーンサポート−既存システムのAMBを使用することにより、初期のデプロイでは一部のチェーンにしか対応できません。本番稼動後に他のチェーンに拡張する計画もありますが、初期段階では以下のチェーンのみをサポートする予定です(Optimism、Arbitrum、Gnosischain、Polygon、BNB Chain、Ethereum)
上記のトレードオフの結果、このメッセージングシステムでも、迅速かつ最小限の変更でロールアウトできる一時的なソリューションとして機能するよう設計されています。
💡 Connextとしては、できるだけ早くシステムをアップグレードし、私たち自身が構築する完全なOptimistic Bridgeにするのか、NomadのOptimistic Bridgeメッセージングレイヤー(復活後)に差し込むかを検討する予定です。
まとめ
このシステムでは、実績のある既存インフラ(AMB)を利用します。
変更点は以下の通りです:
- マークルルート/プルーフを作成・検証するためのコントラクト:堅牢なアウトオブボックスのバージョンとして、エコシステムのあらゆる場所で既に利用可能
- 各チェーンへのコネクタ
- 各チェーン上のGelatoボットは、AMBを通じて定期的にルートをプッシュし、Ethereum L1上のGelatoボットがルートを混合して伝播させる
既にGoerli(Ethereum)とOptimism Goerli(Optimism)にデプロイしており、来週中には動作するテストネットのバックアップを目指します。また、Sokol(Gnosischainテストネット)用のコネクタ開発も完了しており、他のテストネットチェーン(Polygon、Arbitrum、BNB Chain)も間もなく登場予定です。
現在、新システムのための2つの監査をスケジュールしています。
Connextの理念は、ユーザー体験、セキュリティ、テストを改善するためにユーザーと密接に連携し、最適な価値提供をすることにあります。
今後とも、皆様からのご意見、ご質問をお待ちしております。
お読みいただきありがとうございました。
今後のConnext Networkにご期待ください!