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Connextをネクストレベルへ導くアップグレード「Amarok」を発表


Connextをネクストレベルへ導くアップグレード「Amarok」を発表

Arjun Bhuptani

過去数ヶ月間、私たちはユーザー、開発者、ルーターが、Connextと対話しながら直面している問題についての解決策の研究を続けてきました。

そして、本日、Connextの最初のネットワークアップグレード計画を発表できることを、とても嬉しく思っています。

このアップグレードは、私たちがAmarokと呼んでいるもので、Connnextのコアプロトコルを大規模に改善し、ネットワークユーザー経験を大幅に向上させるものとなります。

なぜ「Amarok」なのか?
私たちは、ネットワークのアップグレードに、神話に登場する生き物の名前をアルファベット順で付けることにしました。Amarokはイヌイット神話に登場する巨大な狼です。🐺

今回のアップグレードの目的は、ネットワークのステークホルダーが現在抱えている以下の問題を解決することにあります。

エンドユーザーにとっての問題点

  1. ガスコスト:現在のフローでは、チェーン間取引を完了するために、準備と実行の2段階のプロセスに依存しており、簡単にバッチ処理することができません
  2. 請求のための署名:取引を完了させるには、ユーザーが資金を請求するためのメッセージに署名する必要があります。これはConnextの信頼性を最小化するものですが、署名するまでユーザがオンラインである必要が余計なプロセスとして生じています
  3. 資金ロックアップリスク:ユーザートランザクションルーターと1対1の関係にあり、ルーターがオフラインになったり、チェーンへの接続が途中で切れたりすると、ユーザーの資金はトランザクションの有効期限が切れるまで(72時間)滞留する可能性があります
  4. スピード:ユーザーは特定のルーターと取引するため、ルーターが経験する遅延が全てユーザーに波及します
  5. 流動性の断片化:ルーターが提供する流動性は経路依存であり、あるチェーンのペア間で利用可能であることを意味します。これはチェーン数の増加に比例して、ユーザーの大規模な取引が困難になることを意味します

開発者の問題点

  1. オフチェーンオークションへの依存性:暗号分野の多くの統合はコントラクトのみですが、Connextとの統合では、特定の取引のルーターを見つけるためにクライアント側のSDKを実行する必要があります
  2. 請求のための署名:請求の必要性から、開発者は進行中のトランザクションを追跡し、適切なタイミングで署名するようユーザーに促す必要があります。これは、単純なオンチェーントランザクションと比較して、多くのオーバーヘッドと複雑さを発生させます
  3. 汎用メッセージングの欠如:Connextはチェーン間でコントラクトを呼び出すことをサポートしますが、これは一部のケースでしか安全に実行することができません。この機能の可用性を開発者に学習させることは大きなハードルとなっています

ルーターの問題点

  1. リバランス:ルーターは宛先チェーンで資金を送り、オリジンチェーンで資金を受け取ります。つまり、チェーンやロールアップの間で流動性が移動し、滞留する可能性があり、資本効率を低下させます
  2. 不明確なROI:ルーターのROIは、2段階のフローによって、リターンを追跡するために必要なデータがチェーン間で断片化されているため、正確な追跡が困難となっています
  3. 厳密な稼働率:前述の通り、取引中にルーターが利用できなくなった場合、ユーザーの資金は最大72時間ロックされる可能性があるため、ルーターになることの難易度は高くなってしまいます
  4. ガス・グリーフィング:ユーザーやルーターは、協調して取引をキャンセルすることができますが、その際、ガス代の前払いを弁償する明確な仕組みがありません

私たちは当初、これらの問題を次のような組み合わせで解決できると考えていました:

私たちは、トランザクションを可能な限り信頼できるものにすることに重点を置いており、上記のハードルは、そのセキュリティを達成するためのトレードオフでありました。ここ数ヶ月の間に、新たな信頼要素を導入することなく上記の問題を回避する、より優れたメカニズムの研究を続けてきました。

Amarokへようこそ:モジュラー・インターオペラビリティ

Connextの考え方のブレークスルーは、Nomadとのパートナーシップから生まれました。NomadOptimistic Bridgeで、あらゆるチェーンで表現力豊かな、信頼性を最小限に抑えた通信を可能にしますが、30分のレイテンシーというトレードオフがあります。

ブロックチェーンと同様に、ブリッジに求められる特性を全て備えたモノリシックなアーキテクチャは存在しませんが、プロトコルスタックをモジュール化することで理想に近い結果を得られると考えました。

モジュール型相互運用性スタック

新たなフロー

新たなフローでは、Nomad(将来的には他のローカライズされたメッセージングレイヤーも)をセキュリティモデルとして活用します。このアプローチでは、署名を必要とせずに、どのルーターもユーザーのトランザクションのコールを前払いして実行し、Nomadを経由する資金に対して請求することが可能になります。

ルーターは事前に明示的に指定されないことから、ルーターが与えられたトランザクションを完了するために、メンプール内で互いに競争するリスクが存在しています。これでは最適とは言えず、この競争に負けるとルーターにガスコストの負担がかかります。これを解決するために、ルーターから入札を集め、チェーンに一括して公開する役割を担うシーケンサーロールアップ・シーケンサーに類似)を導入します。

Connextのシーケンサの役割は、システムのコアセキュリティやその資金に何ら影響を与えないことに注意してください。これは、(a) あるユーザー取引に対するすべてのルーターの入札データの可用性と、(b) 落札入札を選択する決定論的プロセスがある場合に、ルーター間で手数料収入や作業を公正に分配するように設計されたメカニズムに過ぎません。現在、シーケンサが独自のロールアップにデータをポストする、またはルータとシーケンサTendermintコンセンサスを達成するなどのアプローチを研究しています。

新フローについてはGithubのディスカッションの投稿で説明しています。

ステークホルダーのための変更

Amarokのアップグレードは、 前述した各ステークホルダーの問題を解決するフローと機能セットを可能にするものです:

  • Fire-and-Forgetフロー:署名による2段階のフローの代わりに、全てのトランザクションが送信チェーン上で単一のトランザクションで実行されるようになり、UXとdevXの両方が簡素化されました。また、キャンセルも不要になり、ルーターのガスコストが不要になります
  • 1-of-Nルーティング:どのルーターもユーザーの取引を完了させることができることにより、ユーザーの資金がロックされる可能性がなくなり、ルーターに要求されるアクティブ性が大幅に減少します。これにより、開発者はオフチェーンオークションのコードを書く必要がなくなります
  • シンプルな流動性ルータートランザクションのデスティネーションチェーンで流動性を受け取ります。また、流動性は経路に依存しません。これによってリバランスの煩雑性や断片化を解消し、資本の効率と可用性を大幅に向上させます
  • より安く速い取引:新たなフローでは、オンチェーンコールを4回から2回に減らし、取引コストを大幅に削減するだけでなく、取引スピードも向上させています
  • 任意のメッセージパッシング:Amarokの最大の改良点は、開発者が完全に表現力豊かなクロスチェーンDappsを構築できるようになったことでしょう。これによって、Solidityのコールバックのサポートを含む、JSスタイルの非同期開発などの強力な機能が解放されています

次のステップへのタイムライン

現在、Amarokのアップグレードを実行するためのプライベートテストネットを用意しています。コミュニティメンバー、既存のルーターパイロット・パートナーと協力して、ネットワークの改善に向けてテストしていきます。

今後数週間のうちに、次のようなリリースを予定しています:

  • アップグレード後のConnextの統合フロー、故障モード、信頼性についての説明
  • 誰もが構築できる機能を実装したパブリックテストネット
  • ルータの実行方法とテストネットへの参加方法に関するガイド
  • xchainコールバックのためのSolidityツール/ライブラリ
  • クロスチェーンアプリ(xapps)のサンプルのリポジトリ

アップグレード監査は5月に予定されており、6月にはメインネットのライブアップグレードを目標としています。

Connextでの構築

これまで私たちは、ネットワークの分散化とルーター操作の自動化に注力してきました。今回のAmarokのアップグレードでは、開発者に対して門戸を開き、全く新しいxappsの世界の構築の機会を提供します。

どのようなものが作れるのでしょうか?

Connextがパイロットパートナーと議論してきた初期のユースケースをいくつか紹介します:

  • チェーン間のDEX流動性を単一のシームレスなtxで接続
  • クロスチェーンのVault zapsとVault戦略の管理
  • チェーン間のグローバル定数(例:PCV)の複製/同期などのプロトコル操作
  • ラクルを導入せずにUniV3 TWAPをすべてのチェーンに導入
  • チェーンにとらわれないveTokenガバナンス
  • メタバース間の相互運用性

クールなxappのアイデアをお持ちの日本の開発者の方は、DiscordでConnextチームに私たちに連絡するか、助成金プログラムに応募してください!


Connextについて

Connextは、チェーンとロールアップの間で高速かつ信頼性の高い通信を行うためのネットワークです。この分野に存在する相互運用システムにおいて、新たな信頼性の仮定を導入することなく、低コストかつ迅速に実行できる唯一のものです。Connextは、ブリッジやその他のネイティブなクロスチェーンアプリケーションを構築する開発者を対象としており、現在までに13億ドルを超えるトランザクションがConnextのネットワークを通過しています。

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