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パラチェーンのローンチ


パラチェーンのローンチ

著:Gavin Wood

Polkadotの段階的なローンチは、新たな章を迎えようとしています。

Parachainの機能と、今後のオークションやクラウドローンの開始に向けての展開を見ていきましょう。

Polkadotのローンチは約10ヶ月前に4つのフェーズを開始し、最後のフェーズである完全な分散化とパーミッションレスへの移行は昨年7月末に実現しました。そして今、Polkadotローンチの最終段階である第5段階が始まっています。

Polkadotは、スケーラブル・マルチチェーンとして、その短い歴史の中において、高度に分散化された包括的なステークシステム(誰でもPolkadotのステークに参加し、報酬を獲得できる)、コアロジックへのシームレスなアップグレード、オープンで機能的なガバナンスを実証してきました。

しかし、これまでは単一のチェーンとしてのみ存在していました。Parachainの機能開始により、この状況が変わり異種混合シャードシステムの最終的なビジョンが実現しようとしています。

先週、Parity Technologiesは、Polkadotのバージョン0.9をリリースし、大きな前進を遂げました。このリリースは、現在Kusamaネットワークの大部分で実行されていますが、ここにはパラチェーンをネットワークに展開する為に必要なロジックが含まれています。また、パラチェーンスロットオークションを実行するための最終的なロジックや、オークションの入札にクラウドファンディングを利用するためのロジックも含まれます。Kusamaは既に本リリース(v9010)に含まれるロジックにアップグレードされており、これでパラチェーンをホストする準備が整いました。

タイムテーブル

Polkadotのパラチェーンは、次の2点が完了した時点で開始される予定です。まず、全ての外部監査が完了すること。第二に、Kusamaが、クラウドローンを使ったオークションを少なくとも1回成功させ、少なくとも1つの機能的なパラチェーンをホストすることで、新しいロジックが機能することを証明する必要があります。

監査は既に始まっており、近い将来に完了します。Kusamaで全てを開始する為の道のりはすでに始まっており、今後数日間で3つのステップを経て完了する予定です。

まず、本日ガバナンスで承認されたばかりのシェル・パラチェーンが配備されます。シェルのパラチェーンは「空」のパラチェーンでありブロックを生成しますが、アップグレード可能なだけで機能はありません。ユーザーアカウント、ステーキング、ガバナンス、バランスなどの概念もありません。また、時間を理解するためのタイムスタンプモジュールも持っていません。その代わりに、リレーチェーンのガバナンス装置からアップグレードを許可するメッセージが届くのを待つだけのものです。そのメッセージを受け取ったシェル・パラチェーンは、リレーチェーンが承認した新しいロジックへのアップグレードを許可します。シェル・パラチェーンは私たちのステージング・グラウンドであり、最初のコモン・グッド・パラチェーンとしてID1,000が与えられます(最初パラチェーンIDは0)。これにはガバナンス投票が必要ですが、既に可決されています。

第2のステップは、アップグレードの実行です。今回の場合、ガバナンスとしてシェル・パラチェーンをステートマイン・パラチェーンにアップグレードすることに投票します。ステートマインは、Polkadotのステートミント・パラチェーンのKusamaインスタンスであり、ファンジブルとノンファンジブルの両方の任意資産をホストすることができるコモングッドチェーンです。また、リレーチェーンのネイティブトークン(KSM/DOT)を保持・譲渡するための低コストチェーンとしても機能します。

アップグレードは、シェル・パラチェーンが24時間問題なく稼働し、ウェストエンドのテストネットで同様のアップグレードが成功した後に提案します。アップグレードには、最初の導入時と同様に、完全なガバナンスと投票が必要となります。

第3のステップは、オークションの開始です。このネットワークは、高度に分散化された900人のバリデーターを擁するKusamaネットワーク上で、取引とコンセンサスを伴うパラチェーンが機能することを実証後、これを実行するです。私たちは既にRococoテストネットでこのテストを行っていますが、Kusamaでは基盤がやや不均一です。ステートマインが正常に動作することで、サードパーティチームのチェーンも正常に動作するという確信を得ることができます。

KSMプールの多くは、現在、Kusamaのステーキングシステムにロックされており、7日前の予告なしには動かすことができません。そのため、Kusamaのウェブサイトでは、最初のオークションの開始日を1週間前に発表し、それに合わせて今後のオークションスケジュールを発表します。現時点では、7日ごとに5回のオークションを行う予定です。大きな問題がなければ、それに続いてオークションが行われることになります。Kusamaの最初のオークションが成功後、すぐにPolkadotオークションが行われる予定です。オークションの最終的なパラメーターが決定したら、オークションのスケジュールと一緒に発表されます。

今後について

今後2ヶ月間は、信頼性、リファクタリング、パフォーマンスの向上に注力していきます。現時点では、最適化されていない実装によるシステム上の問題が発生する可能性を最小限に抑える為に、トランザクション量は意図的に控えめな上限設定がされています。各ブロックで約2,000ミリ秒の処理が行われるところを、ネットワークでは500ミリ秒しか処理できないため、実質的なトランザクション量は75%以上減少しています。コードがより高速で堅牢になれば、この人工的な制限は解除され、取引量は理論的な限界に向かって増加していきます。

この不安定な時期を経て、Polkadotでは当初の想定を超える3つの新機能に注目しています。「Parathreads」、「Off-chain XCMP」、「Spree」です。この3つの機能は同時に開発されますが、Parathreadsは最初に、Spreeはその複雑さから最後にリリースされることになるでしょう。

Parathreadsの機能について簡単に言えば、「利用した分だけ支払うパラチェーン」です。チームがパラチェーンスロットのオークションに勝つ(またはコモングッドパラチェーンとして認められる)必要はなく、パラチェーンコードはオーサリングしたい個々のブロックに対して直接支払うことができます。オラクルチェーンのように滅多にブロックをオーサリングする必要がない場合や、特定の期間にのみブロックをオーサリングする必要がある場合には、6ヶ月間永久スロットを獲得することなくブロックをオーサリングできる機能は非常に魅力的となるでしょう。

Off-chain XCMPは、0.9シリーズでリリースされたベーシックなXCMPのアップグレード版です。ベーシックなXCMPでは、メッセージデータをリレーチェーンを介してルーティングすることでパラチェーン間でのメッセージの受け渡しを可能にしていましたが、Off-chain XCMPでは、2つのパラチェーンのコレーター間で直接データをルーティングすることで同じことを実現しています。これにより、リレーチェーンがメッセージの受け渡しのボトルネックになることはなくなり、高いスケーラビリティを実現するとともに、同レベルのセキュリティと非中央集権性を維持することができます。

最後に、SpreeはSecure Protected Runtime Execution Enclavesとも呼ばれ、同じロジックを全てのパラチェーンに安全かつ均質に分散させることができる機能です。これにより、互いのビジネスロジックやガバナンスを信用していないパラチェーンでも、相互に作用することができます。他人のチェーン間でのトークンの移動、チェーン間で移動するNFTの特性の維持、さらにはスマートコントラクトの共有も、この機能を使って実現することができます。


Polkadotのエコシステムに参加しているサービス・プロバイダーの方で、この機能がどのようなものかわからない場合は、support@polkadot.network までお問い合わせください。Polkadot.jsでは、パラチェーン、オークション、クラウドローンで何が起こっているかを見ることができます。
ElementについてはPolkadot Watercoolerでチャットできます。