EVM、仮想マシン、EVMチェーンを理解する
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EVMは、全てのEthereumスマートコントラクトが実行されるサンドボックスを表します。AvalancheやPolygonなど多くのブロックチェーンがEVMをサポートしており、これによってEthereumのdAppsの移行が容易になります。NEAR、Solana、CosmosといったEVM対応をしていないエコシステムも、AuroraやEvmosといったEVM実装を手に入れつつあります。しかし、これらはMove VMやWASMのようなより安全で効率的なソリューションに対抗できるのでしょうか?
仮想マシンとは何をするものなのか?
仮想マシン(VM)とは、コンピュータをエミュレートするプログラムです。仮想マシンは「システム」「メカニズム」「ソフトウェアプラットフォーム」などと抽象的な定義がされますが、基本的にはインストールして実行するプログラムです。
VMが行うのは、「マシン」つまり別のコンピュータをエミュレートすることです。VMは独自のメモリやストレージ、CPUも保持しており、その上でさまざまなプログラムを実行したり、ファイルを作成したりすることができます。しかし「マシン」だけは物理的に存在しません。
Ethereum Virtual Machine(EVM)の話題を頻繁に見かけることから、ブロックチェーンに特化した技術だと思っている人が多いのですが、そうではありません。実際、Macユーザーであれば、ユーザーが想像している以上にVMに馴染んでいる可能性があります。ParallelsやVMWareなど、Mac上でWindowsのプログラムを実行するソフトウェアを試したことはありますか?これらも実は仮想マシンなのです。
1台のコンピュータでVMのコピーを複数起動し、「偽のコンピュータ」の仮想ネットワークを作成することも可能です。しかし、これには多くのリソースが必要なので、プロ仕様のサーバーでの実行が推奨されます。
サンドボックスとしての仮想マシン
サンドボックス(sandbox)とは、新しいコードやアプリケーションをテストするための仮想環境のことで、テスト対象が動作しなくても、システムの残りに影響を及ぼすことなくテストすることができるものです。
例えば、ノートパソコンに新しいプログラムをインストールして起動したら、他のプログラムが正常に動作しなくなり、コンピュータがフリーズし、OSを再インストールしなければならなくなった、ということはあり得ることです。しかし、サンドボックスを使うことで、悪影響を及ぼしているプログラムがサンドボックス外にダメージを与えることはないのです。
サンドボックスで実行されているものは、ウイルスやDDoS攻撃など、システムに影響を与える可能性のあるネガティブな事象から保護されます。これはブロックチェーンの仮想マシンにとって非常に重要なことです。
また、異なるデバイスやOSに同じコードをデプロイしてテストできることも可能で、これにより、開発者間のコラボレーションが容易になります。
技術用語の一部ですが、VMは物理サーバーとソフトウェアの間に追加のレイヤーを作成するので、抽象化レイヤーとも呼ばれます。また、プログラムを実行するために使われるため「ランタイム環境」と呼ばれることもあります。その他にも、プロセッシングマシンやコンテナなど、多くの呼び名があります。
要約すると、VMは独立したコンピュータ/サーバーのように機能する分離環境を作成します。仮想マシンの主な用途は以下の通りです:
- 別のOSや古いOS用に作成されたソフトウェアを、サポートされていないマシンで実行する
- 新しいコードをテストする
- システムに影響を与える可能性のある外部の脅威から保護する必要がある機密性の高いアプリを実行する
EVM:初のブロックチェーン仮想マシン
EVM(Ethereum Virtual Machine)は、ブロックチェーン業界向けに開発された最初の仮想マシンであり、物理的なマシン(ノード)とスマートコントラクトコードを分離する抽象化レイヤーです。全てのEthereumノードはEVMのインスタンスを実行し、それらが一緒になって一種のウェブ、またはグローバルな分散型コンピュータを形成しています。
ちなみにVitalik Buterin氏は、Ethereumを「ワールドコンピュータ」と呼んでいます。
EVMは、単純なサンドボックスを超える重要な役割を担っています。技術的な話になってしまうので、ごく基本的な説明をすることにします。
分離による保護
まず、EVMはdAppsをマシン(ノード)から分離します。これによって、マシンがDDoS攻撃やウイルスに襲われたとしても、アプリとブロックチェーンは安全が守られます。第二に、dApps同士を分離します。1つが誤動作したり、悪い機能が存在することが判明しても、他のdAppsは正常に機能することができます。
実行:バイトコードからオペコードへ
EVMは、Solidityで書かれた人間が読める複雑な命令を、機械が読んで実行できるバイトサイズのコマンドに変換します。
Ethereumのスマートコントラクトは、Solidity、Vyper、FEなどの言語で書かれています。これらは高水準のプログラミング言語であり、プログラマーであれば読むことができるが、機械はそうもいきません。機械が読める低レベルの言語への翻訳が必要となるのです。
EVMは、SolidityやVyperなどをEVMバイトコードと呼ばれるよりシンプルな言語にコンパイルして仮想マシンで実行します。この概念はEthereum独自のものではなく、Java仮想マシンなども独自のバイトコードを持っています。
バイトコードは、多くの短い、人間が読める命令、つまりオペコードで構成されています。Ethereumには「STOP」「ADD」「NUMBER」「GASPRICE」など、140のオペコードがあります。すべてのオペコードは、記録にちょうど1バイトのスペースを必要とすることから「バイトコード」と呼ばれています。
料金によるDDoSの防止
EVMが実行する各オペコードには、ガス料金という対価を支払わなければなりません。オペコードによって必要な計算量が異なるため、ガスの量も異なります。例えば、乗算は5ガスで済みますが、Ethereumアカウントの残高を取得する場合は700ガスと膨大な費用がかかります。
ところで、なぜガス代は有料なのでしょうか?この答えは「セキュリティのため」です。もし、ガスが無料であれば、悪意の行為者がダミー取引でネットワークを埋め尽くし、ネットワークをフリーズさせる(DDoS攻撃のようなもの)ことができてしまうからです。ガス代がゼロでなければ、そのような攻撃は非常に高いコストを伴います。
ステートマシンとしてのEVM
ブロックチェーンは、ある瞬間、ある状態にあることがわかる仕組みを持っています。これは、全てのアカウントの残高と、その他のデータで構成されています。新しいブロックが追加されるたびに、状態は変化していきます。
トランザクションの処理はEVMで行われます。全ての入力(トランザクション要求/コントラクトの呼び出し)に対して、状態遷移を引き起こす出力を生成します。このように、EVMはステートマシンとして定義され、ブロックチェーンの状態がどのように変化するかを決定しています。
チューリング完全かどうか?
EVMはチューリング完全だから安全である、という話をよく見かけます。これは何を意味するのでしょうか。それは本当に重要なのでしょうか。
システム(プログラミング言語など)がチューリング完全であると言われるのは、そのシステムに投入したタスクがコードとして表現できる限り、時間とメモリが無制限に与えられた場合、そのタスクを計算(解決)することができる場合を示します。基本的には、チューリング完全な機械は1000年かかっても、何兆テラバイトのメモリがあっても、計算問題に対する出力を生成することができるのです。
EVMは、Solidityがチューリング完全言語であることから、チューリング完全と言われています(つまり、どんな命令も表現することができます)。しかし、実際にはチューリング完全ではありません。というのも、オペコードを追加するたびにガス料金が加算され続けてていくので、あまりに複雑な計算をすると、料金が高すぎて誰も払えなくなる可能性があるからです。
これは問題となるのでしょうか?結論から言うと、そうでもありません。Kadenaのシニア開発者Emily Pillmoreが指摘するように、ブロックチェーンにはチューリング完全性を必要とするユースケースはありません。それどころか、チューリング完全であることが、リエントランシー攻撃などの新たな脆弱性を生み出すことさえあるのです。
EVMは完璧ではない:6つの主要な問題点
EVMはブロックチェーン業界にとって画期的なイノベーションでありdAppsを可能にしました。それと同時に、その設計上の欠点を指摘する専門家もいます。
1)バイトコードは人間が読めるものではないため、開発者や独立したオブザーバーがスマートコントラクトコードを分析・検証することが困難
2) デバッグが困難である。これは前述のポイントの直接的な結果でもあります。dAppで何がうまくいかなかったのかを理解するために、バイトコードを人間が読める形に逆コンパイルする必要があります。
3) 速度が遅く、ガス料金がかかる。EVMの速度は1秒間に処理されるオペコード数を意味するので、Ethereumのブロックチェーンのトランザクション処理能力とは同じではないことに注意してください — これも1秒間に15トランザクションと遅いです。
4)安全性が十分でないEVMは、ブロックチェーンとdAppsを悪意のコードの影響から保護することになっていますが、実際には私たちは常に新しいスマートコントラクトの悪用事例を見ています。特に危険なのはリエントランシー攻撃で、ハッカーが撤退関数を繰り返し呼び出してコントラクトの資金を流出させるものです。
5) コントラクトがアップグレードできない。Ethereumのスマートコントラクトは、デプロイ後に変更することができないため、何が問題だったのかを発見しても、それを修正することはできません。新しいコントラクトをデプロイし、ユーザーを移行するなど、一からやり直す必要があります。
6) EVMは、ネイティブスタナーライブラリをサポートしていない。ライブラリは、VMと一緒に配布される標準コントラクトのセットであり、開発者は、ゼロからすべてのコードを書く代わりに、ライブラリからすぐに使えるものを使用することで、時間を節約することができます。スマートコントラクトでは、ライブラリを使うことでガスも節約でき、その結果、金銭的にも節約できます。しかし、EVMには標準的なライブラリがデフォルトで含まれていないため、スマートコントラクトの記述とデプロイは非常に高価になります。
なぜEVMの地位が揺らいでいないのか?
こうした問題にもかかわらず、Ethereumは最大のdAppハブであり続けています。そのDeFi TVLは、最も近い競合相手であるBinance Smart Chainのほぼ9倍となっています。
トップ10のチェーン(BSC、Avalanche、Fantomなど)のほとんどがEVMをサポートしており、この事実を確固たるものにしています。高価で遅く、安全でもないのに、なぜEVMがブロックチェーン領域を支配しているのでしょうか?また、代替の仮想マシンを使用するプロジェクトにとってのトレードオフは何なのでしょうか?
簡単に言えば、Ethereumは先発者としての優位性を持っているのです。競合が先発組織からユーザーを引き離すには、より優れた製品を提供すると同時に、ユーザーが移行しやすい製品を提供する必要があるのです。
EVMの競合にとっては、Solidityを熟知している何千人もの開発者、監査済みのコードサンプルやスマートコントラクトのライブラリ、高い流動性など、Ethereumの強固なネットワーク効果によってこの作業は特に困難なものとなっています。
EVMをサポートすることの重要性と利便性:
- 既存のEthereum dAppsを、コードを書き換えることなく、新しいチェーンに移行/拡張することができる
- 開発者が新しいプログラミング言語を学ぶ必要がない
- 開発者は、MetaMask、Truffle、Waffleなどの使い慣れたEthereumツールを使用できる
- ユーザーは、既存のMetaMaskアカウントを使用して、新しいチェーン上のdAppsに接続することができる
また、AvalancheやFantomなど、EVMを採用した代替スマートコントラクトプラットフォームは、以下を提供することで成功を収めました。
a) 一般ユーザーにとって、Ethereumよりも優れたユーザー体験:チェーンははるかに高速で安価
b) 開発者にとってなじみのある(しかし、よりスムーズな)体験。多くの開発チームがそのチェーンで構築し、流動性を惹きつけることができるための仕組みづくり
最終的に代替ブロックチェーンは流動性のために競争します。チェーンがEVM互換であれば、すぐに独自のバージョンや人気のあるDeFiプロジェクトのフォークを取得し、ユーザーも惹きつけることができます。例えば、Daniele Sesta氏のWonderland($TIME)は、EthereumベースのOlympus DAOのフォークですが、Avalancheをベースにしているため、使用料がはるかに安くなっているのが特徴です。
しかし、そのトレードオフとして、このチェーンは頻繁なエクスプロイトやスマートコントラクトの非アップグレード性など、EVMのすべての問題に対処しなければならなくなります。
EVMの代替ソリューション:Move VM、WASM、eWASM、BPF
EVMを使用する代替ソリューションとして、別の仮想マシンの導入が挙げられます。この方法には、以下の利点があります:
1)技術的な向上:EVMの問題点から解放されたシステム(より安全でデバッグしやすいものなど)を構築可能になる
2) オペコードの処理速度が上がり、ガス料金が低減される
3) 様々なプログラミング言語をサポートできる
4) マーケティングの可能性:新しいVMは非常にニュース性のある材料となります
もちろんデメリットも存在します。既存のEVMベースのdAppは簡単にネットワークに移行できないので、エコシステムの構築が困難になります。多くのリソースが必要になり、開発者やエンドユーザーを惹きつけるために追加の特典を提供しなければならなくなります。
その結果、EVMに代わる良質な製品は現状ではほとんど市場に存在していません。ここでは4つのソリューションを見ていきます。
Move VM、WASM (WebAssembly)、eWASM、BPFです。
Move VM
Move VMとMoveプログラミング言語は、Meta(旧Facebook)が支援するDiemプロジェクトのために開発されました。その結果、EVMよりもはるかに安全で、柔軟性と拡張性の高いシステムが完成しました。ここでは、そのセキュリティ機能の一部をご紹介します(詳細はMove VMのページでご確認ください):
- アクセス制御と安全性:開発者は、デジタルアセット(トークン)ごとに所有権や権限を設定することができます。これにより、誰かがスマートコントラクトのハッキングに成功したとしても、所有権を持たないため、流出させることはできません。
- エラーの防止:MoveとMove VMを使えば、一般的なスマートコントラクトのバグの多くは、単純に不可能になります。非常に重要なことですが、Move VMでは、リエントランシーや二重消費攻撃のリスクが非常に低くなっています。
- バイトコード検証:特別な検証ツールが、デプロイされる前に新しいコードをチェックし、エラーの排除に役立ちます
当初のアイデアは、DiemブロックチェーンとDiemベースの新しいステーブルコイン(当初はLibraと呼ばれていた)をFacebookやInstagramなどのアプリに統合することでした。しかし、Metaは規制当局から多くの抵抗を受け、最終的にDiemの全資産をSilvergate blockchain bankに売却しています。
同時に、かつてDiem協会に所属していた開発者グループが、新たなパブリックチェーン「Aptos」を発表しました。このプロジェクトは、MoveとMove VMの上に構築されます。Metaは投資家として参加していませんが、AptosはすでにThree Arrows CapitalやBlockTowerといったファンドから2億ドルを調達しています。
Aptosは間違いなく、この領域に関わる全ての人のレーダーに留めておくべきプロジェクトです。私たちPontem Networkは、ここで新しいエコシステムのためのインフラを構築しています。すでにLiquiswap DEXとブラウザボードのエディタMove Code Playgroundを試すことが可能です。
Pontem Networkは、開発者がAptosがライブになる前に、ライブ環境で彼らのdAppsをテストし、人気を獲得した上で、KusamaやPolkadotの流動性へのアクセスを可能にしていきます。また、Aptosに対抗してMove VMを使った新しいレイヤー1ブロックチェーンが生まれる可能性は十分にあり、そのこともPontem Networkのエコシステムを後押しすることになるでしょう。
WASM(Polkadot、Kusama)
WASMは、World Wide Web Consortium(W3C)によって作られたコードの一種であり、Apple、Google、Microsoftでの元開発者が参加しています。高速で柔軟性があり、ガス効率がよく、デバッグがしやすいのが特徴です。WASMのコードは人間が読むことができ、C、C++、C#、Haxe、Typescript、Rustなど、さまざまな言語をサポートしています。
WASMはブロックチェーン専用に設計されたわけではなく、Chrome、Firefox、Microsoft Edgeの多くのWebアプリや拡張機能で使用されています。そのため、ブロックチェーン以外の開発者は、SolidityやEVMを学ぶよりも、WASMを介した参入がしやすくなっています。
WASMに対応しているブロックチェーンは、Polkadot、Kusama、EOSIOなどです。ちなみに、この2つの次世代仮想マシンを連携させ、Move VMをWASMランタイムに接続したのは、Pontem Networkが最初となります。
eWASM (Ethereum 2.0)
EthereumはEth 2.0(Serenity)へと徐々に移行しています。これは、1秒あたり最大100,000トランザクションの容量に達すると想定されているProof-of-Stakeネットワークです。 途中で、Ethereum WebAssembly(eWASM)を優先してEVMを廃止する予定です。
eWASMを使うことで、開発者はSolidity以外の言語でEthereumのスマートコントラクトを書くことができるようになります。そして、デバッグが容易になり、システム全体がよりスムーズかつ高速に動作し、ガス料金も安くなると想定されています。また、トランスコンパイラ(EVMのコードをeEWASMで使えるように変換するツール)も提供する予定です。
しかし、過剰に期待をしない方がいいかもしれません。これまでのところ、Eth2.0プロジェクトはあらゆる段階で遅延に悩まされており、完全移行は2022年とされていますが、ノードオペレータやdApp開発者がeWASMに移行を年内に完了する可能性は低いと思われます。
BPF (Solana)
BPFはBerkeley Packet Filterの略で、仮想マシン上で実行可能な言語です。実際のVMはEbpfVMと呼ばれ、Linuxで導入されたオリジナルのBPF VMを改良したものであり、Solanaのスマートコントラクトを書くために使われる言語はC、C++、Rustとなっています。
チームは、なぜBPFを選んだのかについて、明確な説明はしていませんが、Solanaハッカソンのコーディングに関するブログ記事の中で、開発者のBrian Andersonは「BPF命令セットがx86コンピュータ・アーキテクチャにマッピングしやすいから」であると理論づけています。
新たなトレンド:マルチチェーンエコシステムにおけるEVMの実装
Cosmos、Polkadot、Kusamaなどのマルチチェーンネットワークは、Ethereumと非常に異なる技術スタックを使用しています。しかし、遅かれ早かれ、全てのチェーン上でEVMの実装を得ることになるでしょう。
そのプロセスは次のようなものです:
- Ethereumよりもスケーラブルで安価に利用できる新しいブロックチェーンエコシステムが登場するが、すぐ使えるEVMのサポートはない
- この新しいエコシステムは、複数の独立したブロックチェーン/パラチェーン/サブチェーンをサポートしている
- 将来的にはEVMをサポートしながら、エコシステムの高速・低コストを活用したパラチェーンやサブチェーンを考え出すと想定される
- 新しいエコシステムに進出したいEthereumベースのdAppはEVMサブチェーンに集まり、EVM/Ethereumハブとなる
- このハブは、EVMとWASMのように複数のVMをサポートすることも可能となる
このようなEVMの実装の例を参照して、それらがエコシステムに何を提供するかを見てみましょう:
Aurora (NEAR)
NEARは新進気鋭のブロックチェーンで、シャーディング技術を使って10万tpsのスループットを達成しています。NEARは主に2つのことで知られています:風変わりなNFTコレクションとEVMチェーンAuroraです。
NEARはDeFiLlamaのチェーンランキングで14位、TVLは5億2500万ドル、Auroraは5億200万ドルで15位です。マザーチェーンとほぼ同額の流動性を蓄積しているということは、NEARでのイーサリアム互換dAppsの需要が非常に高いことを示しています。
当初、NEARはRainbow Bridgeを通じてイーサリアムネットワークに接続されていました(現在も接続されています)。その後、Rainbowの開発者の数人が別の道を歩みAuroraを構築しました。
Auroraには次の利点があります:
- ベーストークンはETH — NEARもAURORAも必要ない
- MetaMaskとWalletConnectをサポート(MetaMaskにAuroraを追加するためのチュートリアルはこちら)
- NEARへのトークン転送はRainbow Bridge経由で可能
- ガス代はイーサリアムの1000分の1(約0.1ドル)
- トランザクションは2秒程度で確定する
- ERC20トークンであれば、Auroraにブリッジして戻ってくることができるため、EthereumからのNFT送金も可能になる
- NEAR上の他のチェーンと同様に、将来スケーリングが必要な場合はシャード化することができる
なお、EthereumからAuroraにトークンを送る際には、標準的なガス料金(執筆時点で約7ドル)を支払う必要があります。ゼロに近い手数料は、Auroraネットワーク内のトランザクションにのみ適用されます。
Auroraはチェーンの名前であり、仮想マシンの名前ではありません。ここで使われているEVMの実装は、Parity Techが開発したSputnikVMです。サポートされている言語は、SolidityとVyperです。
Auroraの主なアプリ
SushiSwapやAaveのようなメジャーなdAppsはまだAuroraに進出していません。現状のトップ10はほとんどがAuroraネイティブのdApps(Trisolaris, Aurigami, Bastionなど)で構成されており、唯一の例外はSynapseです。
Neon EVM (Solana)
Solanaは、EVM互換性のないブロックチェーンエコシステムとしてはTronに次ぐ規模であり、40億ドルのTVLを持ち、1分間に約2,400件、1日あたり約350万件のトランザクションを処理しています。しかし、これらの90%はバリデータ投票であるため、Solanaの実際の「有用な」トランザクション数は1日約35万件程度であると考えられます。これはEthereumの125万件よりはるかに少ないですが、ネイティブdAppsのみをホストするエコシステムとしては多い数といえます。Solanaで見られるアプリのほとんどは、他のチェーンでは動作しません。
Neon Labsによって、EthereumネイティブのDeFiプロジェクトがSolana上で見られるようになることが期待されています。EVM実装はまだライブではありませんが、テストネットとdevネットはリリース済みです。2021年11月にSolana CapitalやThree Arrows Capitalといった著名なバッカーから4000万ドルを調達しています。
なお、NeonはチェーンではなくdAppです:Solanaは独立したブロックチェーンやシャードをサポートしていません。このdAppはNeonswapと呼ばれる独自のDEXを搭載し、Solana上で初のUniswapフォークとなります。
オリジナルのEthereum Virtual Machineがアップグレードされるたびに、Neon EVMを簡単に更新できるようになる予定です。当初、ユーザーはガス代を支払うためにNEONトークンが必要になりますが、将来的には、このプラットフォームによって、ユーザーはETHやERC20でもガス料金として使えるようになる予定です。
UniswapやCompoundなどのDeFi巨人がSolanaに上陸したときに何が起こるかは、非常に興味深いものとなっています。SerumやRaydium、SolendといったネイティブのAMMやレンディングプロトコルはローンチするのでしょうか?2022年中に、私たちはそれを知ることになるでしょう。
Moonbeam (Polkadot) & Moonriver (Kusama)
KusamaとPolkadot(Dotsama)のエコシステムでは、プロジェクトはしばしばペアで行われます。まず、実験的なKusamaプラットフォームでクラウドローンを行ってパラチェーンスロットを獲得します。次に、Polkadotでクラウドローンを行う形です。このような姉妹プロジェクトのペアは、通常、同じ機能を持っていますが、その違いは、Kusamaで実行されているものが、すべての新機能のための試験場として機能することです。
Moonriverは2021年6月にKusamaの2回目のパラチェーンオークションで落札し、Moonbeamは2021年11月にPolkadotの2回目のオークションで落札しています。
MoonbeamとMoonriverは、開発者にEthereumとの完全互換環境を提供し、Metamask、Truffle、Waffle、Remixなどのツールをサポートしています。さらに、DeFiハブであるAcalaやそのステーブルコインaUSDなど、他のDotsamaパラチェーンやツールとの統合の取り組みも進んでいます。
Moonriverは、Kusamaで最大のTVLを持つパラチェーンです(2022年5月下旬に1億7800万ドル)
現状では、ブリッジアプリ(Synapse、Connext、cBridge)を除けば、SushiSwapがMoonriverに参加した主要なEthereumネイティブのDeFi dAppの1つとなっています。トップ5の残りのdAppsはMoonriverネイティブであるMoonwell、Zenlink、Solarbeam、Houses of Romeです。
PolkadotのMoonbeamは、現状のTVLで$72mしかなく、トップ5には非ブリッジEVMネイティブのdAppが一つBeefy Financがあるだけです。
Evmos (Cosmos)
Cosmosのエコシステムは、多くの独立した「世界」、互いに統合されたブロックチェーンを特徴としています。最大のチェーンはステーブルと170億ドル超のTVLを持つTerra(執筆当時)であり、DEXとイールドファーミングプールで人気のOsmosisがそれに続いています。
Evmosは、これらと同様に独立したチェーンですが、エコシステム全体のEVMハブとして機能することを目標としています。Ethereumネイティブのプロジェクトは、新しいチェーンとして展開され、全てがEvmosにリンクされる予定です。
非常に重要なのは、Evmos独自のERC-20トークンモジュールが、TerraやOsmosisなどのCosmosチェーンと互換性があることです。また、IBC(Inter-Blockchain Communication Protocol)のおかげで、ハブはそれらと連動することになります。理論的には、EvmosにEthereumネイティブのdAppをデプロイし、そのトークンをOsmosisなどで取引やファーミングに利用できるようにすることが可能となります。
Evmosは2022年3月にローンチしましたが、バグが多く、開発者は緊急アップグレードを展開することにもなりました。最終的に、メインネットは4月27日に再ローンチすることとなりました。AaveはEvmosにデプロイされる最初のEthereum dAppsの1つになります:これはCosmosエコシステム全体の分散型融資に大きく加速させる可能性があります。
このように、EVMチェーンには多くの期待すべき機能が存在しており、実際にEthereumからNearやCosmosなどの代替プラットフォームに必要とされる流動性をもたらすことができるようになります。しかし、EVMの最も合理化されたバージョンでさえ、セキュリティとスケーラビリティの面ではWASMやMove VMに対抗することはできません。
仮想マシンの戦いは、2022年と2023年の最も興味深いブロックチェーンイベントの1つになるかもしれません。
私たちPontem Networkは、Move VMを軸にする当事者として、この物語を最前線で皆さんにお届けしていきます。各リンクをフォローして、一緒にこの先の世界を見に行きましょう!