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誰もロールアップに関心を持たないのではないかという心配は杞憂となるか


誰もロールアップに関心を持たないのではないかという心配は杞憂となるか

著:Haseeb Qureshi

過去6ヶ月間のイーサリアムにおける最大の話題は、取引需要の爆発でした。トランザクション手数料は過去最高を記録し、多くの一般ユーザーがイーサリアムの利用を断念し始めた経緯があります。

ETH fees in USD. Credit: Coinmetrics

しかし、心配いりません。救世主が現れたからです。

もちろんロールアップのことです。VitalikはEthereumのスケーリングの未来をロールアップに託しました。主要なロールアップ関連プロジェクトは1億ドル以上の資金調達に成功しています。全ての主要なDeFiプロトコルは、まもなくローンチするロールアップの将来的な採用を約束し始めています。

ロールアップについてご存知でない方や復習が必要な方のために、非常に簡潔な概要をご紹介します。ロールアップは、その上に構築されたブロックチェーンのセキュリティ特性を継承するミニブロックチェーンであるといえます。ロールアップのバリデーターやオペレーターが信頼できない場合でも、あなたの資金が盗まれることはありません。ロールアップには、OptimisticロールアップとZK(ゼロ知識)ロールアップの2つの基本的なタイプが存在します。optimisticロールアップは、不正証明(誰でも自由に計算の真正性を証明できる)により保護され、ZKロールアップは、暗号(数学的に計算の真正性を証明する)により保護されます。ロールアップの詳細についてはここでは説明しませんが、より詳細を知りたい方はVitalik氏の記事をご覧ください。

ロールアップの優位性は、完全にトラストレスであることです。イーサリアムを信用するのであれば、ロールアップを同様に信用することができます。これは紛れもないスケーリングソリューションであり、Ethereumのリーダーたちにもその利便性が受け入れられています。

もう一点、ここ6ヶ月間のイーサリアムにおける2番目に大きな話題、Binance Smart ChainとPolygon(旧Matic)の台頭を見てみましょう。これはロールアップではなくサイドチェーンであり、完全に独立したPoSのEthereumクローンです。基本的には、既製のGethを使用してコンセンサスコードを抜き取り、ガスの上限を上げ、マルチシグを使ってEthereumにブリッジバックしているだけです。

Polygon(緑) vs Binance Smart Chain(黒) vs Ethereum(青)のトランザクション Credit: Our Network

PolygonとBinance Smart Chainのトランザクション件数は、イーサリアムよりも増加しています。また、AvalancheやNEARのような他のブロックチェーンも、Ethereumとのブリッジ機能を持つ独自のEVM互換システムを開発しています。

世界は基本的にこのようになっています:

これはシャーディングに似ていますが、Ethereum 1.0をビーコンチェーンとしたものであると説明できます。クロスチェーン転送やメッセージは、マルチシグやその場しのぎのブリッジ、少数の信頼できるパーティによりサポートされます。私はこのアーキテクチャを「貧乏人のシャーディング」と呼んでいます。

これが、現状におけるDeFiのスケーリング方法の実態です。

しかし、この悲観的な状況はすぐに終わりを迎えようとしています。なぜならロールアップがまもなく誕生するからです。

私はロールアップに期待しています。マジでそう思います。
ロールアップは破壊的でかつエレガントで、とても素晴らしいデザインを有しています。

しかし、その一方で、ユーザーがロールアップに関心を持たないのではないかと心配しています。その理由は以下の通りです:

レイヤー2の救世主

昔話をしましょう。

かつて、スケールしないブロックチェーンが存在しました。しかし、ある知識人たちが、ブロックチェーンをスケールさせるための~トラストレスなレイヤー2技術~を発明しました。ユーザーは興奮しました。

そして、何年ものハードワークの後、その知識人たちはついにレイヤー2の構築に成功しました。しかしユーザーがそれを使用することができるようになっても、実際には誰も使おうとしませんでした。

なぜなら、彼らはすでに他のもっと単純でジャンクなソリューションを使っていたからです。

この話には心当たりがありませんか?

ライトニングを覚えていますか?しかし人々はWBTCを使いました。

プラズマを覚えていますか?しかし人々はxDaiを使いました。

そして今、人々はロールアップを待つことなくPolygonやBSCを利用しています。

優れた物語は全ての人の問題を解決します。そしてこの物語、つまりロールアップ・スケーリング・ストーリーもまた、誰もが楽しめるものです。分散の最大化を目指す方々は、トレードオフなく Ethereumを拡張するという壮大なストーリーを語ることができます。トレーダーは、ロールアップによりETHが10Kドルになることを説明するチャートに線を引くことができます。また、AAVE-MATICを熱心にファーミングしたり、デジタル競馬にベットしながら、不思議そうにこの話を聞いています。

笑い事ではなく、これには、本当の意味での階級的要素が存在します。ロールアップはどちらかと言うとEthereumのインテリ層に圧倒的に支持されています。

しかし、多くの人々が既にPolygonやBinance Smart Chainを採用していることを無視することはできません。VCのオピニオンリーダーもこの事態を予測していませんでした。インドやインドネシア、タイ、フィリピンなど、発展途上国の膨大な数のユーザーがこれらのプラットフォームを利用しており、その多くはEthereumを使ったことすらないようです。

「銀行口座を持たない人に銀行を」という言葉を覚えているでしょうか?これらのプラットフォームは、実際にグローバルに展開しており、ユーザーが実際に関心を持っていることをアピールしています。

私はよく、現在の暗号ユーザーを動かす動機は3つあると言っています:

  1. お金を稼ぐ
  2. 楽しむ
  3. イデオロギー

この3つのうち、イデオロギーは最も弱いものです。そして私はこのイデオロギーのみがロールアップの採用を後押しする要因となっている状況を心配しています。

レイヤー2の問題点は、理論的には最適解であっても、実際にはそうでないことが多いのです。

ロールアップの苦悩

現在、PolygonではUniswapのようなシンプルなトランザクションに0.0001ドルかかります。Binance Smart Chainでは0.20ドルです。Ethereumでは約7ドル、Optimismでは約0.68ドルかかります。

ロールアップはサイドチェーンよりも高価なのでしょうか?

これは、全てのロールアップは最終的にEthereumにデータをポストしなければならず、これによりロールアップの料金はイーサリアムの料金に関連づけられます。各ロールアップはEthereumを一定の倍率でスケールすることになるため、多くのユーザーがすでに利用しているものと比較して、手数料はそれほど低くはなりません。

また、どのロールアップも正確にはEVMに対応していません。これらのロールアップの仮想マシンとEVMにはそれぞれ微妙な違いがあります。ArbitrumではAVMを、OptimismではOVMを使用していますが、それぞれがいくつかのコントラクトやEVMと互換性のあるツールを微妙にカスタマイズしています。ZKロールアップでは、ZKRがSolidityをゼロ知識回路にコンパイルして、ZKの仮想マシンで実行しますが、これはもはやEVMとは全く別の世界の話となります。これに対してPolygonの場合、コントラクトをコピペするだけで全てが機能することがわかります。

次に、ロールアップの資金の出し入れについて考えてみましょう。

Optimisticロールアップでは、資金を引き出そうとすると約1週間のチャレンジ期間があり、その間は出金が凍結されてしまいます。これは最悪です。そこで、マーケットメーカーは「迅速な引き出し」を促進するために、手数料を払ってユーザーの資産をクロスボーダーで迅速に移動させるプロセスを踏みます。マーケットメーカーが請求する手数料は、マーケットメーカーの資産の流動性により異なります。ETHを移動させる場合は0.2%程度ですが、例えば、dogeコインを移動させようとした場合、1%以上の費用がかかる可能性があります。資産によって十分な流動性がない場合、高速引き出しに全く対応できないことも考えられます。

ユーザーとしては、ロールアップによるDeFiポートフォリオを計画する際に、これらを考慮する必要があるでしょう。従来のマルチシグベースのブリッジをロールアップに使用することで、この出金問題を回避することも可能です。しかし、マルチシグ形式のブリッジでカストディリスクを取る場合、Polygonに比べて具体的にどのような点が改善されるのでしょうか? (なお、ZKロールアップでは、引き出しが事実上即時に行われるためこの問題は発生しません)

私が心配しているのは、このようなオーバーヘッドが存在すると、ロールアップはどちらのユーザーにも対応できなくなる可能性があるということです。もしあなたがセキュリティに強い関心を持っているスーパーホエールであれば、メインネットの手数料についていちいち考える必要は無いかもしれませんし、もしあなたが一般的な大衆ユーザーであるならPolygonでいいということになるでしょう。

さて、このような中で今後、どのソリューションが残るのでしょうか?

今後の潮流

この記事を作成する直前までしばらく、レイヤー2がどのように展開するかを考えていました。

Ethereum上の全てのDeFiプロトコルがレイヤー2にコミットし、あるものはOptimismを選び、Starkwareを選び、最も多くのブランドを集めたものが最終的に支配的なロールアップになると考えていました。

しかし、それが正しいメンタルモデルではないことは今では明らかです。圧倒的にDeFiプロトコルマルチホーミングであり、すでにAAVE、Sushi、CurveがPolygonでリリースされ、TVLは80億ドルを超えています。Sushiは5つのチェーンに、Curveは4つのチェーンに対応しています。Uniswapは長期間、Optimismとだけ提携していましたが、間近に迫ったArbitrumのローンチに伴ってその方針を変えて、マルチホーミング戦略を採ることになりました。

そして、Binance Smart Chainは「ここでローンチしなければ、フォークをローンチして、あなたが得られるはずだった収益を奪う」と皆に宣言しました。今後は、全ての主要なDeFiプロトコルが、全ての重要なチェーンに対して先手を打ってローンチすることになると思います。

では、ユーザーがどこに行くかを決めるのは、本当にプロトコルなのでしょうか?

または、プロトコルの行き先を決めるのはユーザーなのでしょうか?

今のところ、PolygonとBinance Smart Chainから得られた教訓は後者のように思えます。プロトコルはユーザーに追従し、それによって大きな報酬を得ています。

経験豊富な投資家は、それでも現状の視点ではロールアップが勝つだろうというコンセンサスを持っています。また、Vitalikはロールアップが大好きです。Ethereumの開発に関わる多くのメンバーもロールアップが好きです。ロールアップが主流になるでしょうし、ロールアップに投資するべきであると考えるのが定石でしょう。しかし、私は心配です。

この素晴らしいソリューションを誰も気にしないのではないかと心配なのです。ロールアップがもともと期待していたもの、つまりEthereumのエコシステムとスムーズに統合する、高速で安価なEVM互換のブロックチェーンを人々はすでに手にしているからです。

では、どうすればロールアップは長期的に勝てるのでしょうか?

私の考えでは、2つの方法があります。1つは、ロールアップではないサイドチェーンが壊滅的な失敗をして業界がMt.Goxのような教訓を学ぶことです。大惨事とは、「ノードが同期できない」「そこにあるはずの資金がなくなった」「チェーンが完全に停止した」というものです。その可能性はゼロではありませんが、おそらくありえないでしょう。

そこで、もう一つの方法としては、ロールアップが実際にそれらの簡易的な代替品よりも著しく優れたものになるということです。非中央集権的な美徳を示すだけでは不十分でり、この点について私個人としては、暗号技術とゼロ知識証明のコミットという1つの道筋しか見えていません。

ゼロ知識証明の基盤となる暗号技術は、ここ数年ムーアの法則のような軌跡をたどってきましたが、その勢いは今後も衰える気配がありません。ZKロールアップでEVMのような計算を行うことは以前は不可能だと考えられていましたが、zkSyncStarkwareは、ZK-SNARKを再帰的に合成して任意の長さの計算チェーンを証明することで、まさにそれを実現しようとしています。そのうち、現在のロールアップの定数倍のスケーリングをはるかに超える大規模な計算圧縮、プライバシー保護のスマートコントラクト、証明可能なMEV耐性なども実現させてくるのではないかと思います。

また、ZKロールアップでは、状態の成長はそれほど問題になりません。なぜなら状態がどれだけ大きくなっても、ユーザーはSNARKの配列を検証するだけで、常にその正しさを確認できるからです。

長い目で見れば、ZKの技術はどんどん向上・改良されていくでしょう。

zkSyncが生み出したzkPorterは、ValidiumとZKロールアップのハイブリッドであり、ユーザーは両者間をシームレスに移行することができます。データをオフチェーン化したValidium側では、Polygonと同等の料金を設定することができ、より高いセキュリティを求めるユーザーには、より高価なZKロールアップを利用することができます。これにより、ユーザーのあらゆる選択肢が一つの屋根の下に統合され、それぞれの間で完全な相互運用性が確保されるのです。

zkPorterのアーキテクチャ Credit: Matter Labs

私の考えではこれが未来の在るべき方向性であると確信していますす。

スケーリングにおける更なるイノベーションの扉を閉ざしてしまうわけにはいきません。ロールアップについて、私はこの部分に賭けています。しかし、未来は誰にもわかりません。ただ、もしユーザーが最初からロールアップを受け入れるのであれば、彼らにとってもEthereumにとっても最善なこととなるでしょう。

<この記事は飛行機の中で急いで記述したので、見落としがあるかもしれませんがお許しください。ドラゴンフライは、この記事で言及されているほとんど全ての銘柄を保有しています。IvanとCeliaの簡潔なレビューに感謝します>

原文:https://medium.com/dragonfly-research/im-worried-nobody-will-care-about-rollups-554bc743d4f1


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