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AIと学習、知識、教育の未来に関する5つの予測


AIと学習、知識、教育の未来に関する5つの予測

by Anne Lee Skates

編集・翻訳:Takeshi@Think Globally, Act Locally

昨年、OpenAIがチャットボット「ChatGPT」をリリースしたとき、ユーザーは脚本やプログラミング、作曲など、関連分野の衰退を宣言しました。

その中で、ChatGPTの威力を最も(良くも悪くも)実感できる分野として挙げられたのが、教育分野です。ChatGPTの技術によって、学生は論文や入試課題のエッセイの作成を簡単に作成できてしまうようになり、一方の教師側もまたカリキュラムをAIにアウトソースできるようになります。

しかし、これだけではChatGPTが教育の終焉をもたらすとは言い難いでしょう。学生がチャットボットの作品を自分の作品だと言い張ることができるのと同様に、AIが作成した作品を検出する新しいプログラムが既に登場し始めています。

実際のところ、上手に活用すれば、AIは生徒の思考能力やソフトスキルを大幅に向上させる可能性を秘めています。AIに依存することで、子どもたちが基本スキルを学ばなくなり、練習を避け、一般的な知識を持たずに育ってしまうのではないかと心配する懐疑論者に対して、心理学者のエドワード・デシとリチャード・ライアンは「自己決定理論に基づいて、人間は自律性、関連性、能力によって本質的に動くものであり、どのような近道があっても学び続けるものである」と提唱しています。

ウィキペディアの作成がその例と言えるでしょう。あらゆることをオンラインで調べられるからといって、私たちは歴史や科学の知識の習得をやめたわけではありません。むしろ、事実を確認し、学習を促進するための新たなリソースを手に入れただけにすぎません。

教育は、AIの最初の消費者向けのユースケースの1つであり、ChatGPTのようなプログラムは、何百万人もの子供、教師、管理者がAIを導入する入り口として広く活用されていくでしょう。

以下では、AIと学習、知識、教育の未来に関する5つの予測について探っていきます:

1. マンツーマンモデルが主流に

家庭教師、コーチング、メンターシップ、セラピーなどのサービスで1対1のサポートを受けることは、これまでは富裕層だけが享受できるものでした。AIは、このようなサービスをより民主化させていくと考えられます。

これは、Bloomの2シグマ問題(1対1の指導を受けた生徒は、従来の教室教育と比べて標準偏差2倍の成績を修めた)の解決策ともなり得ます。例えば、アカデミックツールのNumeradeは最近、AIチューター「Ace」をリリースして、学生のスキルレベルをキュレーションし、パーソナライズされた適切な学習プランを生成する仕組みを提供しています。

AIは、時間に制約のある専門家や学術界の著名人を、全ての学習者の手の届く存在にすることもできるでしょう。この開発は、メンターシップや徒弟制度が重要な職業にとって、革新的な民主化をもたらします。もし、アーリーステージのスタートアップの創業者が、AI版のマーク・アンドリーセンやポール・グレアムとチャットできたらと想像してください。

Historical Figuresは、リンカーンプラトンベンジャミン・フランクリンといった歴史上の重要人物と会話することを可能にする仕組みを構築しています。このCharacter AIでは、誰でも現実または想像上の「キャラクター」を作成して会話することができるのです。

メンタルヘルス分野では、AIを活用したソリューション(ReplikaLinkなど)は、低コストで常時予約が取れることに加えて、人間のセラピストよりも気軽にコミュニケーションでき、親しみやすい存在として患者にとっての有益な選択肢となる可能性があります。

AIはパーソナライズして様式的な好み(認知行動療法と行動療法のどちらを好むかなど)に即座に適応できるため、セラピー業界で知られている発見とマッチングの難しさという問題を解決することができます。また、AIによるセラピーは、限界コストが低いソフトウェアとして機能します。つまり、より低コストの製品を作成することができ、マスマーケットへの迅速なアクセスが可能になるのです。

これは決して人間が何の役割も果たさない世界を想定しているわけではありません。現時点のAIは完璧ではなく、人間レベルの思慮深さや専門性を(まだ)100%得ることはできません。また、単純に人間に直接的に関わりを持ちたいと思う人も一定数存在し続けるでしょう。

2. 個別学習が現実に

AIによって、学習のモダリティやニーズ(例:視覚かテキストか音声か)からコンテンツの種類(例:好きなキャラクターや趣味・ジャンルをコンテンツに取り入れる)やカリキュラムまで、全てをパーソナライズすることが可能になります。また、自分のスキルレベルやギャップをより正確に教えることができるようになるでしょう。

ソフトウェアは、個人個人の知識を追跡し、進捗状況をテストし、知識やギャップに基づいて、カスタマイズされたコンテンツを繰り返したり、再フォーマットしたりすることが可能になります。

例えば、カメオは、ブリッピやスパイダーマンなどのトップクラスの知的財産を使った子供向け製品をリリースしました。子供のトイレトレーニングを促すために「スパイダーマン」にお願いしたケースでは、実際に想定以上の効果があったとされています。また、AIは、知識的に進んている学習者から、遅れをとっている子供や教室での挙手を恥ずかしがる生徒、特別な学習ニーズを持つ生徒など、様々なタイプの学習者に対応できるようになります。

3. 教師と生徒の双方向AIツールの台頭

歴史的にみても、生産性ソフトウェアに関しては、教師や学生がトレンドを生むキーパーソンとなっています。実際、CanvaやQualtricsといったスタートアップの初期ユーザーには、学生や教師が名を連ねていました。

Canvaの場合は、創業者が通っていた西オーストラリア大学の学生が、学校の年鑑を作成するためにこのプラットフォームを使い、Qualtricsの場合は、ノースウェスタン大学マーケティング学部のアンジェラ・リー教授が、MBAや博士課程の学生のデータを収集するためにこのサービスを使い始めたのがきっかけです。学生や教師が初期の生産性ツールを愛用したように、AIが知能を向上させてより「人間らしく」なり続ける中で、チャットベースの会話型インターフェースを活用したソフトウェアにおいても、アーリーアダプターとして機能することが想定されます。

教師が次世代AIツールを採用するであろうもう一つの理由は、教師(特に公的機関の教師)は過労と低賃金化に悩まされており、本来時間を割くべき生徒に集中する時間が少なくなっているためです。現在、教師は採点や授業計画の作成と準備に多大な時間を費やしています。

これぞ正にこのソリューションの真骨頂であり、既存の何百万という教材から学習したAIが、授業計画や活用資料を作成するなどして、教師の負担を劇的に軽減することが可能になります。あとは、先生がそれぞれの授業に合わせて、そのアウトプットを修正していけばいいのです。その分、個々の生徒への個別対応など、これまで「おまけ」になっていたと本来の目的に注力することができるようになります。

一方、学生にとっても時間を節約し、学習を効率的に進めるためのクリエイティブな方法を見つけることができるようになります。今では、PhotomathやNumeradeなど、AIを駆使した新しいリソースが登場しており、複雑な数学や科学の問題に対する理解をサポートしています。特に大学は密度の高い環境であり、人気のある製品は、学生や教授によるクラスでの使用を通じて、直ぐに口コミでユーザーベースが拡大します。

4. 評価や資格認定面における新評価ツールの開発

冒頭でも触れたように、ChatGPTのリリース以来、教育関係者は、AIを利用した証拠の割り出しについてどのように「取り締まる」べきかの議論を始めています。ニューヨークシアトルなど公立学区を含む世界中の学校では、ChatGPTや関連するAI作文サイトの利用を禁止しています。大学入試の小論文に至っては、そのプロセスの継続自体にも疑問の声が上がっています。

一方で、教育関係者の多くは、ChatGPTは、むしろ学習や授業に組み込むべき技術であり、AIの活用は将来的に重要なキャリアスキルになると主張しています。これを実現するためには、授業の成果の評価方法について、抜本的な調整を行う必要があります。ウィキペディア、電卓、インターネットなどが登場し、今では重要な授業技術となった流れと同じことです。私たちは、学校が生徒の学習成果をより適切に評価し、資格を授与するのに役立つ次世代ツールと、教師と生徒の生活をより良く、より簡単にするAI活用ツールの両方の出現を待っている状況にあります。

考慮が必要な点として、この技術へのアクセスによって、特定の生徒が学習やアウトプットにおいて大きなアドバンテージを得る可能性があることが挙げられます。例えば、AIツールへのアクセスを禁止している学校や家庭でインターネットにアクセスできない生徒はAIに触れることができませんが、リソースがある生徒は学校や家庭でAI技術について学び、使うことができます。また、公立学校よりも私立学校の方が、生徒と教師の比率が低く、予算も多いことから、新技術を取り入れやすいという状況もあり、今まで以上に環境による教育の格差が広がることが考えられます。

5. ファクトチェックの重要性

もう一つの大きな関心事は、AI時代における「真実」の在り方です。アルゴリズムは利用可能なデータに基づいて学習されますが、これらのデータは全て、現状ではまだ人間の判断と行動の影響を受けています。つまり、人種や性別など、あらゆる社会的バイアスがアルゴリズムにインプットされ、こうしたバイアスは今後も増幅され続けるということです。

例えば、Gmailの文章補完AIは「投資家=男性」と仮定しています。Googleのスマートコンポーズチームが、この問題を修正するために試みていますが、今のところ成功していません。

このように、AIが事実と異なる情報を提供する可能性があるという環境下では、ファクトチェックが重要になります。特に、現状のAIが生成する回答は、とある事柄に関する内容をまとめて文章化でき、その推敲のクオリティも高まっていることから「事実と異なっていたとしても正確な情報であると錯覚してしまう」危険性があります。一例として、WSJで紹介されたワシントン大学の研究によると、AIが作成したニュース記事を読んだ人の72%が、事実が正しくないにもかかわらず、信頼できるニュースであると感じたということです。

今後、私たちは高品質で事実に基づいた正確なコンテンツをどのようにキュレーションすればよいのでしょうか。同じ機能を持つAIツールであったとしてもその情報の偏りや精度によってユーザー生成コンテンツやノンブランド媒体への信頼は低下していくようになるでしょう。その反面、既に信頼し、尊敬されているパーソナリティやブランド、専門家に対する盲目的な信頼感は増していくもようになるのかもしれません。

また、細部を理解しないままこの能力を活用する世代が生まれてくるかもしれません。そうなると、細部にわたる知識が重要になる場面で問題が発生する可能性があります。例えば、Web開発の抽象化を考えてみると、ハードウェア、インフラ、バックエンドといった低レベルのものから、GitHub Copilotのある世界、フロントエンドエンジニアがデータベースやバックエンドにほとんど触れる必要のない世界へと移行が進んでいます。

既に非技術者向けのノーコードソリューションも数多く存在しています。この抽象化は、より多くの創造を可能にし、スキルレベルに関係なくユーザーに力を与える素晴らしいものである反面、バックエンドに重大なバグがあり、その修正方法を誰も理解していない場合はどうなるのでしょうか?

私たちは、AIが学習、知識、教育、自己啓発、自己改善を変えるであろうあらゆる方法にとても興奮しています。もしあなたがこれらのカテゴリーで構築しているなら askates@a16z.com までご連絡ください!