VCMにおける早期段階の資金提供のボトルネックを解説
May 20, 2022
Flowcarbon/ 翻訳:Takeshi_TGAL
活況を呈するカーボン市場においても、南半球のカーボンプロジェクト開発者が、自然基盤のプロジェクトを軌道に乗せるために必要な資金を初期段階で調達することは非常に困難です。最近ロンドンで開催されたForestry & Agriculture Investment Summitで、あるプロジェクト開発者(PD)が語った言葉が、これをよく表しています。
「私たちにとって、最初の10万ドルは次の1000万ドルよりも遥かに調達が難しい。」
カーボンクレジットからの収入は通常、カーボンクレジットの引き渡し(販売)時にしか受け取れないため、PDは通常、資金不足に直面します。これはプロジェクト開始日から2〜10年後になることもあり、その間にPDは、プロジェクトに利用できる限られた資金を別途自力で調達するか、確保しなければなりません。この資金問題を解決することは、単に市場の非効率性の解決以上の意味があります。それは、ボランタリーカーボン市場(VCM)の規模を拡大するために極めて重要なことなのです。
民間セクターは自然基盤のソリューションへの資金提供に取り組んでいますが、民間セクターの投資を可能にする環境作りに必要なリスクによって、特に初期段階ではPDが民間資金を利用することは非常に大きな制約となっています。
質の高いカーボンクレジットの作成には、真摯で継続的な取り組みが必要となります。大まかに言えば、プロジェクトの設計と登録、検証、監視、そしてVerraやGold Standard、American Carbon Registryなどのカーボンクレジットプログラムや標準規格の下での検証などが含まれます。最後のステップは、カーボンクレジットの発行であり、PDの実施コストは非常に高額かつ多大なものとなります。
あるPDが説明したように、資金調達パートナーやフォワードオフテイカーはカーボンの大幅な割引を期待しているため、PDは、フロントローディングファイナンス(プロジェクト開発コストの前払いまたはカーボンクレジットの前払いによる資金の確保)を避けることがよくあります。 しかし、PDにとっては、プロジェクトのリスクを軽減し、政治的・規制リスクに対処し、プロジェクトの立ち上げからカーボンクレジットの発行までをより簡単に行えるようにするために、この資本が必要な場合もあるのです。
もちろん、民間投資家の立場からすれば、上の図が示すように、プロジェクトへの直接投資は非常に高いリスクを伴います。また、プロジェクトの実施にも時間がかかるため、投資家にとって短期的なリターンは限定的なものとなります。
このように、需要が急増しているアウトプットを生み出す重要なプロジェクトに取り組むPDが利用できる資金調達方法には、革新の余地があります。Flowcarbonを含む多くのプロジェクトは、PDの効率的で早期の資金源を促進する方法について再考し、新たな形を作り出す必要性を把握し、取り組みを続けているのです。