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Web3構築のための分散化:原理、モデル、方法


Web3構築のための分散化:原理、モデル、方法

著者:Miles Jennings |翻訳:Takeshi_TGAL

この記事はa16zの機関紙Futureに掲載されたものです


分散化に関しては、なぜそれが重要なのか?という基本部分から、インターネットを動かすソフトウェアを誰がコントロールすべきなのか?という大きな問題に至るまで、盛んに議論されてきました。なぜなら、過去に私たちが目の当たりにしてきたように、ごく少数の人(企業)の手にコントロール権が握られている状態には、個人の自由や選択、プライバシーに対する侵害が内在しているからです。有名な「悪になるな」という格言は、CEOがある方針を決めたときに「悪になれない」というのとは全く違うものなのです。

インターネットを分散化することは非常に困難なことでした。中央集権的なシステムの確立された効率性と安定性と比較した場合、分散型システムはその性能を上回ることができず、苦戦を強いられてきたのです。しかし現在、暗号技術とWeb3という新しいテクノロジー、具体的にはプログラマブルブロックチェーン、コンポーザブル・スマートコントラクト、デジタルアセットによって、分散型システムは前例のないレベルの連携と運用機能を実現できるようになっています。この進化によって、新たな形のガバナンスや組織、コミュニティが所有・運営するネットワークやサービス、強固な経済、その他多くのイノベーションが可能になります。

私たちは既に、分散型金融(DeFi)や様々なカテゴリのインフラがローンチされるのを見てきていますし、同様に、ソーシャルメディアやゲーム、音楽、マーケットプレイスといった既存のWeb2カテゴリの分散版も、そう遠くない将来に見られるようになるでしょう。これらのシステムの成功は、利害関係者間のより公平な所有権、検閲の削減、多様性など、分散化の実際の利点を提供できるかどうかにかかっています。しかし、DeFiで使用された分散化モデルは、これらのより複雑なシステム(より多くのUI、豊かなクライアント体験、利便性の高いサービス、ライセンス及びIPの取り扱いなど)には必ずしも有効ではありません。

そこで、過去数年にわたり暗号分野の創業者たちと接することで得られた分散化の具体的なモデルと原則を共有し、ユースケースを用いながら分散化が実際に何を意味するのかを解説することは、今後のWeb3開発者を導く為に役立つのではないかと思い、今回の執筆に至りました。あなたのWeb3への旅がどの段階にあるかに応じて、記事全体を読むか、記事の元となったより包括的な論文を読むか、あるいは直接こちらをご覧になることをお勧めします:

  1. Web3の分散化という設計課題を理解するためのフレームワーク
  2. 分散化を達成するために、Web3システムの新しいコンポーネントをどのように使用するべきかついてのまとめ
  3. 複数の分散化モデルの分析と、実際のユースケースへの適用例

(1) Web3分散化の設計課題

地方分権は、技術、経済、法律の3つの異なる、しかし相互に関連する要素にまたがる1つの設計上の課題と考えることができます。これらの要素について理解することは、Web3システムを設計する上で重要です。なぜなら、1つの要素に関する設計上の決定が、他の要素に影響を与えるからです。

技術的分散化

技術的分散化は、主にweb3システムのセキュリティ構造的メカニズムに関連します。プログラマブルブロックチェーンの背後にある革新は、価値の移転が可能な、パーミションレス、トラストレス、検証可能なエコシステムの提供によって技術的分散化をサポートできること、その上にweb3の製品とサービスを構築できることが重要です。

つまり、中央集権的な仲介者を必要とせずに、製品やサービスを展開・実行することができ、広大な可能性を開くことができるということです。技術的分散は、他の2種類の分散(経済的分散と法的分散)の基礎となるものであるといえるでしょう。

経済的分散化

経済的分散化は、Web3システムの経済に関係するものです。プログラム可能なブロックチェーンイーサリアム、ソラナ、アバランチなど)と、そのデジタル資産(ETH、SOL、AVAXなど)の出現により、オープンソースと分散型システムが、ついに独自の分散型経済(自律した自由市場経済)を持つことを可能にしています。

これは決定的なブレークスルーであるといえるでしょう。Web1のような前世代の技術(http、smtpftpなど)のオープンソースと分散型プロトコルは、継続的な開発と、重要なリソースをシステムに戻すインセンティブに欠けていたため、停滞しました。これは、Web2の中央集権的な企業が出現し、成功するための最適な舞台が整っている状態でした。彼らは、その効率性とリソースを活用して、Web1を凌駕する製品とサービスを構築することができたのです。しかし、この中央集権化は、ユーザーの権利の侵害、デプラットフォーム、強引な料金徴収など、数え切れないほどの懸念すべき事例を生み出しました。

現在、Web3を支えるテクノロジーは、より洗練されたオープンソースと分散型システムの構築を可能にし、その周囲に分散型経済を形成することを可能にしています。

Web3システムの構築者は、情報や経済的価値、投票権など、あらゆる形の「価値」を幅広いソースから抽出し、その「価値」をシステムの利害関係者の貢献度に応じて公平に分配するメカニズムによって、分散型経済の形成を促進しています。Web3システムは、このメカニズムの実現のために、(エアドロップなどのトークン配布、分散型ガバナンスを通じて)システムの利害関係者に意味のあるパワー、コントロール、オーナーシップを付与します。利害関係者は、自分の貢献がどのように扱われ、それに対しどのような報酬が与えられるかについての設計に対する議決権を持ち、同時に、有意義な価値を提供するためのインセンティブを与えられているのです。

開発者、貢献者、消費者といった利害関係者間の持続可能なインセンティブのバランスにより、システム全体への価値の貢献が促進され、最終的には全ての人の利益につながります。言い換えれば、中央集権的な支配や囚われた経済といった懸念が生まれることなく、現代のネットワーク効果の全ての利点を享受することができるのです。

法的分散化

法的分散化とは、Web3システムの合法性に関わるものです。この記事では、主に米国の証券取引法に焦点を当てています。証券取引法は、Web3システムが自身のネイティブデジタルアセットを誰がどのように管理し、取り扱われるのかを決定します。「合法的な分散化」の成文化された基準はありませんが、米国証券法、判例法、SECガイダンス(2019年4月のSECのガイダンスを含む)を第一原理的に分析することで、実用的な基準を策定することができます。

米国証券法は、一般的に、より多くの情報を持つ者がより少ない情報を持つ他者を利用する能力を制限することによって、証券取引に「公平な競争条件」を作り出すことを意図しています。これが情報の非対称性の原則であり、米国証券法は通常、開示義務を適用することで、特定の証券取引における非対称性を排除しようとするものです。この原則は、デジタル資産取引において、(1)共同事業への資金投入 (2)合理的な利益期待 (3)主として他者の経営努力に基づくものである場合に、米国証券法を適用すべきかどうかを判断する主観的テスト、Howyテストとして重要視されています。また、もう一つの原則として「経営努力」に依存する場合には(経営者と部外者の)情報の非対称性のリスクが高いと考えられるため、証券取引法の適用が必要であろうという考えに基づいて、情報の非対称性に対処しようとするものです。

上記とSECのガイダンスに基づいて、Web3システムが、(a)重大な情報の非対称性が生じる可能性を排除でき、(b)その企業の成功/失敗を推進するために他者の不可欠な経営努力への依存を排除できる場合に、そのシステムは、そのデジタル資産への米国証券法の適用が必要ないほど「十分に分散化」されていると推測することができるのです。この記事では、このシステムを法的分散化と呼ぶことにします。実際、法的分散化の閾値はほとんどの企業が満たせるものではありません。しかし、以下に述べるように、Web3システムの斬新な構成要素は、この閾値を満たすためのユニークな位置を占めているのです。

このように、技術的、経済的、法的という分散化の3つの側面を総合して、1つの設計課題として全体的に見る必要があります。一般に、技術、経済、法律の間の相互作用は、主に減算的なものではなく、加算的なものです。例えば、分散型経済は、ステークホルダー間の分散型所有、分散型ソースからの価値付加、分散型ステークホルダーへの価値分配を優先させることによって、システムを法的分散化に向けて推進するのに役立ちます。これらは全て、情報の非対称性のリスクと、個人の経営努力に依存する必要性を減少させるものなのです。

法的・経済的な地方分権の背景や、これらの側面がどのように組み合わされているかについては、論文全文をご覧ください。

(2) 分散化に向けたweb3システムの構成要素の活用方法

Web3システムをうまく設計することで、分散化は悪循環ではなく、好循環として機能します。さて、分散化の設計課題に関するフレームワークを得たところで、構築者が実際に分散化を推進するために、Web3システムの以下の構成要素をどのように利用できるのかを確認しておきましょう:

ブロックチェーンとスマートコントラクト

ブロックチェーンとスマートコントラクトは、基本的なレベルでは、技術的な分散化を可能にします。また、以下のように、経済的および法的な分散化を促進する方法で設計することもできます:

  • 透明性の確保 — 例えば、イーサリアムDeFiエコシステムでは、現在、デジタル資産がどこに最も多く預けられ、どこで最も多くの手数料が得られているのかを誰でも確認することが可能です。
  • オープンソースの公共財 — 安全性の確保、分散型経済の育成などのために、誰もが自由に機能を使用し、テストすることが可能です。
  • データのポータビリティ、モビリティ、インターオペラビリティ— ユーザーは、Web3の製品やサービス間で自分のデータ、資産、コンテンツのコントロール権を保持することが可能です。
  • コンポーザビリティの優先 — コンポーザビリティを優先することにより、各要素が相互作用するようにプログラムすることができ、プログラムを誰もが使用できるビルディングブロックのように活用することができます。

これらの特徴を総合すると、情報の非対称性のリスクを減らし、Web3システムの独自技術の重要性を下げ、システムの貢献者と消費者のネットワークの重要性を開発者と比較して高めることができると考えられます。

また、これらの機能は、システムの価値を技術スタックからネットワークにシフトさせます。ネットワークはプロプライエタリなシステムよりもオープンで拡散性が高いため、このシフトは、Web3システムがWeb2システムよりも分散化を達成するのに適した位置にある理由を明確にしています。

デジタル資産

Web3システムの分散型経済は、2つのタイプのインセンティブの組み合わせによって機能します:

これらのうち、デジタル資産は、開発者、貢献者、消費者の間でインセンティブのバランスをとることができるため、分散型経済の形成と継続的な機能を促進するために、Web3構築者が持つ最も重要なツールとなります。

デジタル資産の配布が適切に設計されていれば、より多くの人がネットワークに参加するほど、システム全体の価値が高まるというネットワーク効果の「フライホイール」を推進できる可能性があります。しかし、Web2のネットワーク効果とは異なり、Web3のデジタル資産は、ユーザーが自分の経験を形成し、自分の貢献から利益を得ることを可能にするものです。

ユーザーの獲得と維持に成功すれば、Web3 システムの開発者と貢献者の本質的なインセンティブを大幅に向上させるとともに、システムの価値を高め、それが最終的に多くのユーザーを引き付け、といった具合に正にフライホイールの如く、Web3 システムの価値を高めることが可能です。過去2年間のイーサリアムの成長は、その典型的な例であると言えるでしょう。2020年から2022年にかけて、イーサリアムDeFiプロトコルに預けられたデジタル資産の額は、6億ドルから1500億ドルに増加しています。しかし、これは金額やその価値を物語るものではなく、開発者の活動によって製品やサービスが誕生し、それがユーザーを魅了し、さらに開発者を惹きつけることで新たな製品やサービスが集まり、それがさらなるユーザーの増加につながったことを示すものです。

このようなフライホイールを生み出す可能性に加え、Web3システムのネットワーク効果は、競合プロジェクトが、全てがオープンソースである自身のインフラをコピーして再展開することに対しても、「ネットワーク効果の堀」を設けています。なぜなら、強力なネットワーク効果を持つシステムでは、複製だけではユーザーが新しいシステムに乗り換えるインセンティブにはならないからです。

繰り返しになりますが、Web3システムの真の価値は、その技術スタック、クローズドまたはプロプライエタリなシステム、古典的な堀の存在ではなく、「利害関係者のネットワーク」にあるのです。

分散型ガバナンス

ブロックチェーンやスマートコントラクトベースのプロトコルの大半は、分散型自律組織(以下、DAO)によって管理される分散型ガバナンスシステムを備えています。分散型ガバナンスとDAOは、前述の3つの分散化の基準に沿って、以下のような利点をもたらします:

  • Web3システムの技術的な制御を分散型組織に分散させることによって、システムのガバナンスを制御する単一の当事者の能力を制限することで、Web3システムをより安全にします。
  • 利害関係者に意思決定における投票権を与え、システム内の長期的なインセンティブの調整を確実にします。この機能は、強化されたセキュリティとともに、分散型ガバナンスをより効果的に保ち、Web3システムの分散型経済の全体的な健全性と持続可能性に寄与します。
  • 特定の個人または組織に対する利害関係者の依存を減らすことによって、法的な分散化を維持し、潜在的な情報の非対称性のリスクを低減します。

Web3システムの分散型ガバナンスを設計する際、DeFi分野で既に開発・実施されているいくつかの異なるモデルからいくつかの洞察を参考にすることができます。

例えば、以下のようなものです:

SubDAOs:意思決定を合理化するために、いくつかのDAOは、法務、財務、開発など、特定のカテゴリに特化tしあ権限を持つSubDAOに権限を与えます。

ガバナンスの最小化DeFiプロトコルの信頼性を高め、DAOの参加率に関する課題を克服するために、DAOが実行する意思決定の範囲を最小限にするか、あるいは、より重要な決定にはより高い投票数を必要とする階層構造を作り出すものです。

参加へのインセンティブの付与:効果的なDAOガバナンスを確保するために、代表者制度を含む積極的な参加にインセンティブを与えています。助成金制度はあまりうまくいっていませんが、遡及的な報酬制度は、価値の提供後の貢献に対するインセンティブとしても非常に効果的に機能します。また、うまく設計すれば、健全な競争のある開かれた市場を促進するのにも役立ちます。

プログレッシブな非中央集権:悪意のある攻撃から守るため、多くのDAOは「漸進的分散化」を採用しています。これは、プロトコルやネットワークの安全性が高まるにつれて、開発プロジェクトからコミュニティへと、コントロール権を委譲していくというものです。

最終的に、Web3の構築者は、インサイダーの手に過度の力を与えないように注意する必要があります。そして同時に、重要な制御をコミュニティに委ねる必要があります。権力の不均衡がある場合、Web3の構築者は、その力を分散させるためにプログラムの委譲を検討すべきでしょう。

また、利益のために恣意的に分散型ガバナンスを操作する可能性など、悪意のある攻撃に対する安全策を導入することも視野に入れる必要があります。オフチェーンガバナンス機構やマルチシグ(制御に複数の署名者の承認を必要とする)の使用は、この目的のためによく使われるセーフガードでしたが、最近では、分散化を損なう可能性を含む批判にさらされているケースもあります。

上記のような構成要素が、どのように分散化を強化できるかの事例やベストプラクティスについては、論文全文を参照してください。

(3) 分参加の実践モデル

ここで、先ほどの技術・経済・法律のフレームワークを、いくつかの異なる分散化モデルに当てはめるとどうなるか、実際に見てみましょう。これらのモデルには、「完全」分散化(システムのすべての構成要素が分散化されている)から「オープン」分散化(独立した第三者が分散化されたシステムを共有することに参加する)までが含まれる。また、NFTsプロジェクトやトークナイゼーションプロトコルなど、オープンな分散化の特定のアプリケーションのモデルも含んでいます。

DeFiやアプリケーションを分散化する方法

完全分散は、現在DeFiの分野で最も一般的な分散化モデルです。以下の画像に反映されているように、中央集権型モデル(Web2)から分散型モデル(Web3のような)への移行は、以下を含みます:

  • オープンソースのスマートコントラクトプロトコルを分散型かつプログラマブルブロックチェーンネットワークに展開し、Web3システムのコアインフラ層を形成する — スマートコントラクトプロトコルは、オンチェーン展開できるバックエンドのすべてのコンポーネント(支払い、メッセージングなど)の実行レイヤーを提供します。
  • クライアントレイヤーを分散型で運用 — クライアントは、オフチェーンで動作するシステムの全てのソフトウェアを表し、スマートコントラクトプロトコルへのゲートウェイとして機能します。(クライアントは、単純なフロントエンドウェブサイトから複雑なアプリケーションまで多岐にわたる)
  • デジタル資産の配布— 貢献者やユーザーへのエアドロップ、インサイダー(プロジェクトメンバー、アドバイザー、投資家)への発行、インセンティブスキーム(DeFi流動性マイニングなど)へのデジタル資産の割り当て、およびDAOによって制御されるトレジャリーの形成を実施する。
  • スマートコントラクトプロトコルとDAOトレジャリーを管理するDAOガバナンスを開始する。
  • ユーザーが自分自身のデータを所有し、保持することを保証する。(現在、Web2システムで大きな争点となっている)

このモデルを採用したWeb3システムでは、ブロックチェーンネットワークスマートコントラクトプロトコルの分散化は、各レイヤーを技術的に分散化し、システムを構築したプロジェクトからスマートコントラクトプロトコルをコントロールするDAOという形に移行して、分散型ガバナンスを立ち上げることで実現されています。スマートコントラクトプロトコルをパブリックブロックチェーンに展開し、そのDAOを立ち上げることで、システムの透明性、安全性が高まり、個人・団体に支配されことの証明にもなるのです。

一方、クライアントレイヤーの分散化は、複数の異なる方法で行われてます。DeFiでは、大半のクライアントが、基盤となるスマートコントラクトプロトコルへのゲートウェイを提供するフロントエンドウェブサイトにすぎませんが、各プロジェクトはクライアント/ウェブサイトをオープンソースにして、分散ファイルシステム(IPFSなど)上でホストしています。クライアント/ウェブサイトのオープンソース化によって、プロジェクトから独立したサードパーティが、同じベースプロトコルにアクセスできる独自のクライアント/ウェブサイトをホストすることになる場合が多くなります。さらに、独立したサードパーティは、独自のアグリゲーターダッシュボードにプロトコルへのゲートウェイを構築することが多い傾向があります。つまり、プロジェクトのクライアントやウェブサイトがメンテナンスされているかどうかに関係なく、プロトコルへのゲートウェイが常に利用可能であることを意味します。

このように、プロトコルやその運用に関する情報がブロックチェーンの公開台帳上で透過的に利用でき、また、プロトコルを立ち上げたプロジェクトの運営努力がその成否に重要ではなくなるため、米国証券法の多くの原動力となっている情報の非対称性の可能性はほぼ排除されています。

また、ブロックチェーンとスマートコントラクトのレイヤーは運用されており、どの団体や組織にもコントロールされていないため、システムは完全な冗長性を持ち、もはやプロジェクト単体に依存することはありません。DeFiプリミティブは、ユーザーに実用性を提供し続けるために、継続的な開発をほとんど必要としないため、その適した事例と言えるでしょう。その結果、この分散化モデルを実装したプロトコルは、分散型経済が完全に機能しなくても、合法的に分散化されたものと見なすことができるのです。

完全分散化の限界

DeFiでは完全な分散化モデルが多くのケースで使用されていますが、その単純さゆえに、より複雑なWeb3システムには適さない可能性があります。そのため、構築者は、複雑さをもたらす可能性のある以下の要因を考慮した計画が必要となります:

  • 複雑なクライアント — DeFiのクライアントの非中央集権化は、その相対的な単純さを考えると、ある程度簡単な部類です。サードパーティに、このようなプロトコルへの独立した単純なゲートウェイ(主にウェブサイトの形)を構築してもらうのに、大きなインセンティブは必要ありません。しかし、Web3の製品やサービスが進化していくと、基礎となるスマートコントラクトプロトコルの上に構築された計算コストの高い/リソース集約的なクライアントレイヤーが必要となるため、クライアントの分散化はより複雑になっていきます。例えば、TwitterInstagramのようなWeb2アプリケーションのフル機能を必要とする仮想のWeb3ソーシャルメディアクライアントと比較して、UniswapやCompoundプロトコルへのアクセスを提供するクライアント/Webサイトの複雑さの違いを考えてみてください。この複雑さは、代替クライアントの構築やホスティングに意欲的なサードパーティや、明確なインセンティブなしに自身のシステム内にプロトコルレイヤーへのアクセスを統合しようとするサードパーティの存在を減少させる可能性があります。
  • 大幅な改良が必要 — 同様に、デジタル資産のリリース後に大幅な改良が必要なシステムは、分散型方式でそれを実行することが困難となる場合があります。例えば、DeFiでは、多くのプロトコルが、スマートコントラクトプロトコルの継続的かつ有意義な開発を推進するために、明示的なトークン・インセンティブを上手く利用する方法について、苦心しています。
  • 継続的な運用 — プロジェクトは、デジタル資産のリリース後、そのWeb3システムの価値を向上させるために、運営により関わっていく必要性が生じるかもしれません。この場合、独立したサードパーティから価値の追加的な貢献がない限り、システムの分散化が損なわれてしまう可能性があります。さらに、ガバナンストークンだけでは、プロジェクトが将来生み出す可能性のある製品やサービスに関するいかなる権利も付与されないため、トーク保有者にそのような関連性が存在するかのような印象を与えないように注意する必要があります。
  • 排他的権利の保持 — 開発元となるプロジェクト(あるいはその他の企業)が、システムで使用されるあらゆる知的財産に対する排他的権利を保持する場合、システムの完全な分散化を阻害する可能性があります。例えば、Web3ソーシャルメディア用の複雑なクライアントの開発者が、そのようなクライアントを独占しようとした場合、完全な非中央集権化は達成できなくなる可能性があります。

これらの制限は、経済的な分散化を大幅に促進し、機能するWeb3システムを構築することによって克服することができます。もし、開発者、貢献者、ユーザーの分散型組織が重要な価値を構築し、その報酬を受け取るならば、それによってシステム全体に対するオリジナルのプロジェクトチームの重要性が薄れ、システムは完全分散化モデルからオープン分散型モデルへと移行することになるのです。

オープン分散型モデル:複雑なWeb3アプリケーションを分散化する方法

完全分散型と同様に、オープン分散型モデルには、分散型ブロックチェーンとスマートコントラクトのプロトコルレイヤー、デジタルアセット、DAOなどが含まれます。

しかし、完全分散型モデルとは異なり、オープン分散型モデルでは、独立した開発者が、共有されたスマートコントラクトプロトコルレイヤー上に、複数のクライアント(中央集権化されているかもしれません)を構築し、運用することもできます。例えば、TwitterInstagramのようなWeb2アプリケーションに似た機能を持つWeb3ソーシャルメディア用のリッチで複雑なクライアントの可能性を考えてみましょう。

オープン分散型モデルでは、全てのクライアントが基盤となるスマートコントラクトプロトコルのデジタル資産を利用し、その作成と運用に以下のようなインセンティブを与えることになります。

オープン分散型モデルでWeb3システムを分散化しようとする構築者は、多くのアクティブな参加を促すために、そのインセンティブカニズムと分散型ガバナンスモデルを「クライアントに依存しない」ように設計する必要があります。さらに、単一のクライアントがエコシステム全体を支配できるような、重大な力の不均衡が生じないようにする必要があります。もし、そのような不均衡が発生するようであれば、クライアントの構築者は、そのようなWeb3システムを好ましくなく見て、時間とリソースを投資しなくなる可能性があります。ある意味、このようなシステムは、Web2システムと同様の集中化と制御の問題を抱えることになるでしょう。

また、オープン分散型モデルを採用している構築者は、透明性、オープンソース技術、データのポータビリティ、コンポーザビリティを優先し、システムに対するパワーが開発者の手に集中するリスクをさらに低減させる必要があります。これらの機能は、情報の非対称性を取り除き、競合する開発者の参入障壁を下げ、ユーザーがクライアント間を切り替えることを可能にします。これらは、ユーザーが特定のクライアントによって適用される制約によって影響されない、よりオープンで分散したエコシステムを促進するものです。(現在のWeb2システムでは大きな障害となっており、ユーザーデータはWeb2システムでサイロ化されています)。

最後に、システムの分散型経済が真に耐性を持つためには、Web3システム全体の成功や失敗が、個々のクライアントを含むいかなる個人またはグループにも依存しないことが必要です。もしこの条件が、前述の経済的な分散化の条件とともに、Web3システムに関して満たされる場合、システムで生じる重大な情報の非対称性のリスクは著しく減少し、合法的に分散化されたものになるでしょう。

構築者が、設計上の決定を優先するのは、自らの競争を効果的に煽ることになるので、最初は直感に反する可能性があります。しかし、そうすることで、共有インフラを基盤とした機能的な分散型経済の形成につながり、個々の企業が単独で構築できるよりも広範で豊かなエコシステムを実現することができるのです。

言い換えれば、これらの行動は、一切れを優先させるのではなく、パイ全体を成長させるものであるということです。

Web3のWeb2バージョン

この原則が実際にどのように適用されるかを見るために、オープン分散型モデルを適用して、Web2アプリケーションを簡略化したWeb3バージョンを作ってみましょう。Web3のコミットは、既知の機能やアプリケーションを単に仲介するだけではなく、全く新しいものを可能にするということです。いくつかの簡単な例を挙げていきましょう。

Web3ゲームは、スマートコントラクトプロトコルとガバナンストークンを共有し、ゲーム内通貨とNFTを別々に持ち、プレーヤーと貢献者の両方がデジタル資産を獲得できるように実装する複数のゲームを持つシステム機能させます。また、これらの資産は、エコシステム全体でポータブルになります。最も利用されたゲームは、システムのDAOから分配されるガバメントトークンの最も大きな割合を獲得することができ、ゲームクリエイターはゲームの追加開発に資金を調達することができます。

Web3ソーシャルメディアは、ソーシャルメディアサービスとメッセージングサービスを複数回繰り返し、それぞれが同じオープンソースのスマートコントラクトプロトコル上に個別のクライアントとして構築されたシステムを含むことができます。プロトコルは、ネイティブガバナンストークンを共有し、消費者は使用に応じてトークンを獲得し、貢献者は作成したコンテンツに応じてトークンを獲得し、クライアントはDAOによって確立された様々な指標に基づいてトークンを獲得できます。

Web3マーケットプレイスは、スマートコントラクトとクライアントの集合体が、サービスプロバイダを調整し、顧客とのやり取りやスケジュール管理を容易にするシステムを機能させる可能性があります。開発者は、これらのクライアントのホワイトラベル版を構築し、プロバイダーが多くの異なるレベルのカスタマイズされたサービスや製品を提供できるようにすることができます。クライアントとサービスプロバイダは、システムへの貢献度に応じて、同じガバナンストークンを獲得することができます。

Web3ビジネスでは、既にこのようなトークノミクスを利用して長期的な価値を創造し、獲得している事例が増えつつあります。

最終的には、このモデルにおけるブロックチェーンネットワークとスマートコントラクトプロトコルによって構成されるオープンなインフラは、そのレイヤーの上に様々な専門的製品やサービスを構築するための豊富な環境を提供していきます。この共有インフラを利用することで、構築者は、中央集権的なWeb2アプリケーションをゼロから構築するのに比べ、わずかなコストでWeb3プロダクトやサービスを構築することができるのです。

オープンな非中央集権の推進

オープン分散型モデルにおける経済的分散と法的分散の相互作用から生じる課題は、「鶏か卵か」という問題をもたらします。真の経済的分散はデジタル資産の利用(すなわち法的分散)を必要とするかもしれないが、デジタル資産の利用は経済的分散、法的分散を必要とするのです。この問題は、完全に機能する分散型経済を必要とするオープン分散型モデルにおいて特に深刻となります(必ずしも経済的分散を必要としない完全分散化のモデルを用いたDeFiプロトコルと比較した場合)。

技術的、実用的な観点からこの問題にアプローチする方法はたくさんありますが、Web3システムは漸進的な分散化のプロセスを利用し、完全な分散化を達成する前にデジタル資産の分配に関して予防措置を取ることができます。ここで注意すべき点には、システムが完全に分散化されるまで、譲渡可能性を制限すること、米国での発行と上場を制限することなどが含まれます。

オープン分散型 IP(とサードパーティリソース)を使ったプロジェクトの分散化方法

オープン分散型モデルの反復で、さらに検討する価値があるのは、第三者がリソースをweb3システムに提供し、システムのクライアントがそれを製品やサービスに使用することを意図する場合です。

これは、知的財産(ビデオゲームエンジン、データ資産、マーケットプレイスなど)や、エコシステムの誰もが自分のクライアントのために使用したり、組み込むことができる一連のサービス(規制遵守、マーケティング、ビジネス開発など)のライセンス供与という形をとることができます。

以下のモデルは、Web3システムに貢献されている知的財産を反映します:

特に、クライアントの開発者・運営者が、自分たちの製品やサービスを知的財産所有者のコントロールに委ねたくない場合、所有権のある知的財産の導入は、システムの分散型経済の一部を所有者がコントロールするWeb2経済に戻すように見えるかもしれません。

しかし、このようなリスクは、ライセンスの契約条件(取り消し不能/永久期間、修正/改良の権利など)を通じて軽減することができます。この点で重要なのは、知的財産のどのようなサービスや継続的なメンテナンスが必要なのか、また、そうしたサービスやメンテナンスが(もしあるならば)独立した第三者によって提供され得るかどうかという点です。

最終的には、Web3システムの条件が正しく構成されていれば、その分散型経済はそのまま維持されるでしょう。例えば、クライアントで広く利用可能なAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を使用するWeb3システムは、Web3システム全体の分散化を損なうことはなく、むしろそれを強化する可能性が高いと考えられます。

法的な分散化の観点から、考慮すべき重要な質問は以下の通りです。

知的財産の提供者の本質的な経営努力が、Web3システムの成否を左右するのに必要であるか?重大な情報の非対称性が生じる可能性があるか?たとえ知的財産がシステムの成功に不可欠であったとしても、知的財産の所有者がそれをいつでも取り消すことができなければ、両方の質問に対する答えは「ノー」となり、システムの法的分散化を支持することになります。また、知的財産の所有者が、知的財産に変更を加える前に、DAOの承認を得なければならない場合も同様となるでしょう。

この概念は、知的財産だけでなく、Web3システムに貢献またはライセンスされる可能性のある他のリソースに拡張することができます。例えば、サードパーティの規制遵守サービスが、ユーザーが検証された米国人であることを確認するためにDeFiプロトコルを有効にした場合、そのようなサービスは、Web3システムの分散化を損なうものではありません。同様に、第三者が、個々のクライアントビジネスの活動とは無関係に、マーケティングやビジネス開発に関連するサービスをプロトコルに提供することも考えられます。

三者のリソースの導入がシステムの分散化を損なう可能性は多々ありますが、そのようなリスクは一般的に構造的・契約的メカニズムによって軽減させることができます。

オープン分散型NFTプロジェクトの分散化方法

NFT(Non-fungible-token)プロジェクトとそのコミュニティは、Web3システムの新しいタイプとして人気が高まっており、オープンな分散化の概念について補足説明する良い機会となります。

まず、ほとんどの芸術的なNFTが米国証券法から除外されてしまう理由、つまりHoweyテストの4番目への対応に失敗しているという法的根拠を理解することが重要です。NFTの価値は、その大部分が本質的なものであり、他者の経営努力に由来するものではありません。しかし、NFTのプロジェクトが複雑化するにつれ、Howeyの分析も単純ではなくなっているという状況もあります。NFTプロジェクトは現在、追加コンテンツの作成/NFTの配布、ビデオゲームへのNFTの実装、コミュニティ主導の製品開発、その他の活動を含むことが多く、これらはすべてNFT保有者の他人の経営努力への依存度を高めてしまう可能性があります。

そのため、NFTプロジェクトは分散化の原則をWeb3システムに取り入れることを検討する必要があります。NFTプロジェクトの分散化モデルとは、どのようなものでしょうか。

下の画像はその一例です。これは、次のものを示します。(1) ブロックチェーン上でミントされ、様々なユーザーによって保有されるNFTコレクション、(2) NFTコミュニティに貢献する知的財産、NFT自体(保有者によってコミュニティに「ステーク」される可能性があります)、(3) デジタル資産の分配とインセンティブ付与メカニズム、 (4) コミュニティ知的財産およびDAOトレジャリーに関するDAOガバナンスの開始、 (5) 派生プロジェクトの開始、 (6) ソーシャル集会やイベントの開催など:

このモデルでは、NFTプロジェクトの経済的分散化はいくつかの段階を経て実現されます:

  1. まず、DAOはその初期リソースをコミュニティのエンゲージメント(例:Twitter、Discordなど)に使用し、ソーシャルギャザリングやその他のイベントに資金を提供することで、コミュニティの暗黙のインセンティブ(例:人気)を高めることが可能です。
  2. 第二に、こうした暗黙のインセンティブは、明示的なインセンティブ(交換可能なトークン、NFT販売へのアクセスなど)と共に、コミュニティの知的財産を利用した派生プロジェクトの作成にインセンティブを与えるために使用することができるのです。開発者はそのようなプロジェクトを開発することで報酬を受け、消費者はそのようなプロジェクトを利用することで報酬を受けることができます。例えば、DAOはサードパーティの開発者を雇い、コミュニティのキャラクターを使って、ゲーム内のトークノミクスでコミュニティのネイティブデジタルアセットをフィーチャーしたプレイトゥーアニングゲームを作ることができます。この点で、派生プロジェクトは先のオープン分散化モデルで説明したクライアントと同様の働きをするため、システム全体がNFT保有者に価値をもたらすための単一のソースへの依存度が低くなり、情報の非対称性が大きくなるリスクを抑制するのに役立つのです。
  3. NFTプロジェクトが自由に使えるもう1つの重要な手段は、DAOに発生するNFTの二次販売によるロイヤルティで、これは分散型経済の燃料となり得ます。このロイヤリティは、派生プロジェクトがシステムに十分なリターンをもたらさない期間中、DAOに分散型の収入源を提供します。

最終的には、派生プロジェクトと二次販売からエコシステムに生じる価値の組み合わせが、NFTプロジェクトの健全な分散型経済の創造を促進する可能性があると考えられるでしょう。

法的な分散化の観点からは、再び以下のような重要な疑問が生じます。Web3システムの成否を決定するために、第三者の本質的な経営努力は必要なのか?また、重大な情報の非対称性が生じる可能性はないのか。この質問に対する答えは、前述の検討事項の多くに依存することになります。

しかし、この場合、NFTシナリオの知的財産は、コミュニティ全体の分散化を阻害するどころか、むしろ貢献している可能性が高いのです。なぜなら、知的財産は分散化されたソース(NFT保有者)からDAOに提供されるからです。さらに、DAOがトークンの分配、NFTの追加ミント、分散型知的財産を、分散型収益源(ロイヤルティまたは派生プロジェクトのいずれか)と共に管理すれば、システムに大きな情報の非対称性が生じることはないでしょう。

NFTプロジェクトの多くはまだ初期段階であるため、分散型トークノミクスを展開する例はまだ多くありませんが、様々な仕組みが登場することが期待されます。一方、他のWeb3システムから多くの学びをNFTプロジェクトに取り入れることも可能となります。

オープンな非中央集権:トークン化プロトコルを分散化する方法

トークン化プロトコルは、Web3システムの新たなタイプの一つです。これらのシステムでは、資産はブロックチェーンオンボードされ、スマートコントラクトプロトコルによってトークン化され、その後、販売または他の目的に使用されます。トークン化プロトコルの種類には、シリアル NFT ミンティングプロジェクト、デジタル資産マーケットプレイス、実世界の資産をトークン化するプロトコルなどがあります。

以下のオープン分散型モデルが反映されています::

  • 複数のプロバイダから共有のスマートコントラクトプロトコルを介してオンチェーンに持ち込まれた資産
  • スマートコントラクトプロトコルがそのような資産のトークン化
  • トークン化された資産を複数のクライアントでの販売または使用
  • ネイティブなデジタル資産の分配インセンティブ付与のメカニズム
  • コミュニティの知的財産とトレジャリーに関するDAOガバナンスの開始

このモデルでは、インプット(資産提供者)とアウトプット(資産取得者)の多様性と、トークン化した資産が流れるレイヤー(ブロックチェーン、スマートコントラクト、クライアント)の分散化により、経済の分散化が達成されます。

また、このプロトコルのDAOは、明示的なインセンティブ(ファンジブルトークンの付与、コミッション/手数料なしなど)を用いて、以下のようなことを行うことができます。:

最初の開発プロジェクトは、当初はこれらの役割(資産提供者、クライアント運用者、資産取得者)のいずれかに重要な役割を果たすかもしれませんが、システムが分散化されれば、開発プロジェクトは最終的には任意の役割を担う多くの貢献者の一人に過ぎなくなるでしょう。そうなれば、開発プロジェクトに重大な情報の非対称性が生じるリスクは限定的となり、プロジェクトによる経営努力への依存度は低下します。さらに、多くの役割をDAOおよび/またはSubDAOが担うことができるのです。

時間の経過とともに、明示的なインセンティブは、供給側または需要側の潜在的な不足を考慮するために調整される可能性もあります。例えば、分散型マーケットプレイスでは、売り手(供給側)に対するトークンのインセンティブを高めてプラットフォーム上で販売する商品を増やし、買い手(需要側)に対するトークンのインセンティブを高めて購買を促進することが可能となります。

法的な分散化の観点からは、次のようなことが重要でしょう。Web3システムの成否を決めるために、第三者の経営努力は必要不可欠か?また、重大な情報の非対称性が生じる可能性はないのか。これらの質問に対する答えは、DAOが上記の例のように需要と供給のバランスを取るためにそのインセンティブを効果的に管理できるかどうかにかかっています。

しかし、より広義には、システム全体の成功が特定の組織の努力に依存するほどに、単一の資産提供者、資産取得者、顧客が重要視されてしまうことを防ぐことが、本当に重要なのです。

その他のモデルやユースケース、上記のモデルに関する詳細は完全な論文をご覧ください。


現在、Web3システムの構築者は、分散化の開始、管理、拡大において数多くの課題に直面しています。しかし、分散化を技術、経済、法律の3つの側面を持つ、単一のデザインチャレンジとしてとらえることは、たとえ規制要件が変化しても、構築者がWeb3システムの新しいコンポーネントを使用してこれらの課題を克服する際に、強力な参考ガイドを提供するはずです。

3つの要素の全てを考慮しなければ、ブロックチェーン技術や暗号通貨が可能にする未来には程遠い「擬似Web3」が出来上がることになります。新しい技術で構築されたものの、それ以外はWeb2と変わらないようなWeb3は誰も望んでいません。むしろ、分散化に関し、注意深くかつ意図的に設計したシステムを構築することで、意味のあるデジタルインフラとして、分散型経済に生命を吹き込むことができ、それが今後数十年にわたってインターネットの基礎を形成することになるのです。今こそ、インターネットとその未来を構築する時なのです。

Chris Dixon、Sriram Krishnan、Sonal Chokshi、Eddy Lazzarin、David Kerr、Adam Zuckerman、この記事の包括版での参照文献の著者全員に感謝します。

投稿日: 2022年4月7日

翻訳:Takeshi_TGAL