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メタバースに不可欠な7つの要素


メタバースに不可欠な7つの要素

著者:Liz Harkavy Eddy Lazzarin Arianna Simpson |翻訳:Takeshi_TGAL

この記事はa16zの機関紙Futureに掲載されたものです


メタバース」という言葉が90年代に誕生して以来、特にパンデミック期間(オンライン活動の急増)、FacebookのMeta改名を経て、さらに大きな話題となっています。

これは単なるバズワードに過ぎないのでしょうか?メタバースとは正確には何でしょうか?また、メタバースといわゆる仮想世界(バーチャルワールド)との線引きはどこなのでしょうか?これらの疑問の答えを明確にし、メタバースをどのように捉え、それがweb3とどのように関わっていくのかについて概説していきます。

メタバースとは、インターネットをより社会的かつ没入的に、そしてより経済的に洗練した進化形としての別名に過ぎません。大まかに言えば、これを実現する方法として、2つの競合するビジョンがあります。

1つは分散型で、所有権と新しいフロンティアに寛大であり、相互運用可能でオープン、かつそれを構築および維持するコミュニティにより所有されるものであるということ。もう1つは、中央集権的かつ閉鎖的で、企業の経営判断に左右され、多くの場合、その作成者、寄稿者、およびユーザーから苦痛な経済的負担をもたらすものであるということ。

この2つのビジョンの比較において重要なのは、「オープン」か「クローズか」という点であり、その違いは次のように概念化できます:

オープンなメタバースは、分散化されており、ユーザーがアイデンティティをコントロールでき、所有権を行使し、インセンティブを調整し、プラットフォームではなくユーザーに価値が発生することを保証します。また、透明性、パーミッションレス、相互運用性、コンポーザブルであることなども、その条件となります。

「真の」メタバース(クローズドではなくオープンであること)を実現するためには、この求められる状態に加えて7つの要素が不可欠となります。これらは、メタバースと呼ばれるための最低条件を満たすために必要なものです。私たちの目標は、ビルダーやユーザーのために、何が真のメタバースで何が違うのかについて、初期のメタバースプロジェクトの取り組みを評価するためのフレームワークを提供することです。

1. 分散化

分散化は、適切なメタバースにおける包括的な統治原則であり、この後に続く特性の多くは、この概念に依存するか、またはこれに起因するものとなります。

分散化とは、単一の組織によって所有または運営されていないこと、または少数の権力者の恣意的なコントロールを受けないことを意味します。中央集権的なプラットフォームは、ユーザーや開発者を惹きつけるために友好的かつ協力的にスタートする傾向がありますが、成長が鈍化すると、競争的、抽出的、ゼロサム的な関係になってしまいます。これらの強力な仲介者は、ユーザーの権利の侵害やデプラットフォームに関与し、強引なテイクレートによって閉鎖的な経済をコントロールしていきます。一方、分散型システムは、ステークホルダー間でより公平な所有権を示し、検閲の削減、多様性の増加をもたらします。

このような不安定な状況は、人々がその上に構築することを躊躇させ、イノベーションの妨げへとつながります。中央集権的なプラットフォームは、ブロックチェーンのようにコードで制御するような強力なコミットメントを発揮することができないため、リーダーや組織の気まぐれによって約束が取り消されたり変更されたりする可能性があるのです。このような悪用から保護し、メタバースを安全に保護するための最も強力な方法は、コントロール権の分散化を保証することです。

2. 財産権

現在、成功しているゲームは「スキン」や「エモート」などのゲーム内アイテムやデジタルグッズを販売することで収益を上げています。しかし、ゲーム内のアイテムを購入している人は、実際にはそのアイテムを購入しているのではなく、レンタルしているに過ぎません。運営組織の経営判断でそのゲームが一方的に終了したり、ルールが変更なされたりすると、プレイヤーはアクセスできなくなります。

人々は、web2の中央集権的なサービスに慣れきってしまっているので、実際にモノを所有するという考え、つまり売買や交換をしたり、他の場所に持っていけるデジタルオブジェクトについては、むしろ奇妙に感じてしまうようになっています。しかし、デジタルの世界においても現実世界と同じ論理に従うべきであるということに変わりはないはずです。何かを購入した時点で、それはあなたの所有物です。現実世界で法廷がこの権利を支持するのと同じように、オンラインでもコードによってこの権利を行使すべきなのです。

しかし、暗号およびブロックチェーン技術、そしてNFT関連の技術革新が出現するまでは、真のデジタル所有権は実現できませんでした。簡単に言えば、メタバースはデジタル農奴をホームステッドに変えるのです。

3. 自己主権的なアイデンティティ

アイデンティティは、所有権と密接な関係があります。前提条件として自分自身を所有していなければ、何も所有することはできません。現実の世界と同様に、人々のアイデンティティは、少数の集中型プロバイダーに依存することなく、メタバース全体で持続可能でなければなりません。

認証とは、その人が誰で、何にアクセスでき、どのような情報を共有しているかを証明する、アイデンティティのことです。現在のウェブでは、ソーシャルログインやシングルサインオン(SSO)などのワンクリックログイン方式を使用して、仲介者に代行させる必要があります。MetaやGoogleなどの巨大テクノロジープラットフォームは、このアプローチを使用してデータを収集し、ビジネスを構築しています。つまり、人々の行動を監視することによって、より関連性の高い広告を提供するモデルを開発しているのです。さらに、これらのプラットフォームは完全にコントロールされているため、認証プロセスを革新できるかどうかは、プラットフォームの背後にいる企業の誠実さと意欲に完全に依存しています。

web3の核となる暗号技術によって、これらの仲介者に依存せずに認証できるようになるため、人々は自分のアイデンティティを直接、または自分で選択したサービスを利用して管理することができます。MetamaskやPhantomなどのweb3ウォレットは、このように人々が自分自身を確認する方法を提供します。EIP-4361(イーサリアムでのサインイン)やENS(イーサリアムネームサービス)などの標準規格によって、プロジェクトはオープンソースプロトコルを中心に協調し、より豊かで安全、かつ継続的に進化するデジタルアイデンティティの概念に独立して貢献できるようになるのです。

4. コンポーザビリティ

コンポーザビリティは、システム設計の原則の一つであり、ここではレゴブロックのようにソフトウェア部品を混ぜて使うことができることを意味します。全てのソフトウェア部品は一度作成するだけで、その後は簡単に再利用できます。これは、金融における複利やコンピューティングにおけるムーアの法則のようなもので、指数関数的な力を引き出すことができるため、既知の最も強い経済力の1つとなっています。

コンポーザビリティ(相互運用性と密接に関連する概念)を実現するために、メタバースは高品質でオープンな技術標準を基盤として提供する必要があります。MinecraftやRobloxなどのゲームでは、システムによって提供される基本コンポーネントからデジタル製品や新しい体験を構築することができますが、それらをそのコンテクストの外に移動したり、内部の仕組みを変更したりすることは困難です。決済のStripeや通信のTwilioのように、組み込み可能なサービスを提供する企業は、ウェブサイトやアプリ間で機能しますが、外部の開発者がそのブラックボックスのコードを変更したりリミックスしたりすることは許可されていません。

最も強力な形は、コンポーザビリティと相互運用性が、ソフトウェアスタックの広範囲にわたって許可なく活用可能であることです。分散型金融(DeFi)は、この強力な形を例示しています。誰もが既存のコードを適応させ、リサイクルし、変更し、インポートすることができます。それだけでなく、開発者は、CompoundのレンディングプロトコルやUniswapのAMMなどのプログラムを、共有の仮想コンピュータ(イーサリアム)のメモリに並べて自由に構築することができます。所有権、アイデンティティなどの強力な新要素を組み合わせることで、構築者はまったく新しい体験を創造することができるのです。

5. オープン性/オープンソース

オープンソースとは、コードを自由に利用可能にし、自由に再配布および変更できるようにすることです。程度や種類に関係なく、原則としてのオープンソースメタバースの開発にとって非常に重要であるため、上記のコンポーザビリティと重複するにもかかわらず、独立した成分として分類しました。

では、メタバース開発におけるオープンソースとは、どのようなものなのでしょうか?プラットフォームではなく、優れたプログラマーやクリエイターは、完全に革新的であるために完全なコントロールを必要とします。オープン性とオープンソースは、これを保証するのに役立ちます。コードベース、アルゴリズムマーケットプレイスおよびプロトコルが透明な公共財である場合、構築者はより洗練された、信頼できる経験を構築するために、ビジョンと野心を完全に追求することができます。

オープン性は、より安全なソフトウェアにつながり、経済条件を全ての関係者にとってよりわかりやすくし、情報の非対称性を排除します。これらの特性により、より公平なシステムを構築し、ネットワーク参加者を実際に調整することができるようになります。また、ビジネスにおける長年のプリンシパルエージェント問題と情報の非対称性を調整するために数十年前に設計された、時代遅れの米国証券法の必要性を排除することすら可能になります。

web3におけるコンポーザビリティの力は、そのオープンソースの精神に大きく起因するものなのです。

6. コミュニティオーナーシップ

メタバースでは、すべてのステークホルダーが、その関与に比例して、システムのガバナンスに対する発言権を持つ必要があります。人々は、テクノロジー企業のプロダクトマネジャーが下した指令に、思考停止で従う必要はありません。もし、この仮想世界を誰かが所有し、コントロールするならば、ディズニーワールドのようにある種の現実逃避を提供するかもしれませんが、その真の可能性を発揮することはないでしょう。

コミュニティオーナーシップは、ネットワーク参加者(構築者、クリエイター、投資家、ユーザー)が協力し、共通の利益に向けて努力するためのパズルのピースです。これらの連携は、暗号技術やブロックチェーンの出現なしには不可能でしたが、ネットワークの固有資産であるトークンの所有権によって組織化することが可能になっています。

分散化によって生み出される技術的な進歩に加え、コミュニティが所有する空間の哲学的な意味合いは、メタバースの成功に不可欠なものとなります。web3においては、分散型自律組織(DAO)の参加者が、既にこの原則を心に刻んでいるといえるでしょう。彼らは、組織構造の形式的な硬直性を避け、より柔軟で民主的で非公式なガバナンスの実験を支持しています。これによって、単一の組織ではなく、ユーザーによって管理・統治、構築され、推進されるコミュニティが可能になるのです。

7. 社会的没入

大手テクノロジー企業は、高性能の仮想現実や拡張現実(VR/AR)ハードウェアが、メタバースにとって不可欠な要素であると信じ込ませています。なぜなら、これらのデバイスは彼らにとってのトロイの木馬として機能するからです。各企業は、3D仮想世界のための支配的なコンピューティングインターフェースのサプライヤーとなる方法とみなしており、それによって人々のメタバース体験を仲介するチョークポイントにもなろうとしているのです。

メタバースは、VR/ARの中に存在する必要はありません。メタバースが存在するために必要なのは、広い意味での社会的没入感です。ハードウェアよりも重要なのは、メタバースがどのようなアクティビティを可能にするかということです。DiscordやTwitter Spaces、Clubhouseなどと同じように、遠隔地から人々が集い、共に働き、友人と交流し、楽しむことができます。

パンデミックは、Zoomなどのリモート会議やテレプレゼンスツールの利用が急増したことによって、電子メールなどの従来のテキストベースのコミュニケーションプラットフォームを超えて、より没入感のある体験の必要性を強調しています。さらに、前述した経済的要素(所有権、自己主権、コミュニティオーナーシップ)によって、メタバースは人々が生計を立て、ビジネスに従事し、地位を獲得することを可能にします。典型的なナレッジワーカーの職場では、人々はSlackなどのツールを使って共同作業を行い、伝統的な企業の外では、DAO、Discord、Telegramによるボトムアップの組織活動が普及しています。

メタバースは、メタバースを見るために使うツールである「ビュー」モダリティとは何の関係もありません。それは、ハードウェアの製造を支配している人たちにとって都合のいいミームでしかないのです。


多くの企業や組織が、この分野の様々な部分を構築し始めていますが、もしそこに上記の部分のいずれかが欠けている場合には、私たちの見解では完全に形成されたメタバースとしてカウントされるべきではないと考えています。このフレームワークで明確になっているように、メタバースはweb3テクノロジーの基本基盤なくしては存在し得ないと考えています。

オープンと分散は、その基盤を支える柱です。所有権は分散化に依存し、敵からの強力な影響にもかかわらず、存続し続けられなければなりません。コミュニティの所有権は、システムの一方的な支配を防ぎます。このアプローチはまた、分散化に有効なオープンスタンダードや、相互運用性の下流に位置するコンポーザビリティを強化するものでもあります。

理想的な多次元仮想世界の構築は、これから徐々に実現されていくでしょう。映画「Ready Player One」に出てくるIOIを介したオアシスのようなディストピアが存在しないよう、多くの問題を解決していく必要があります。もし、各構築者がこの公理に忠実に取り組んでいけば、そのような懸念は実現しにくくなるでしょう。(もしあなたがそのような問題解決者やビルダーであるなら、私たちに連絡してください!)

メタバースが到来したとき、それは分散化を核としたこれらの原則を、完全に具現化したものとなっているはずです。

投稿日: 2022年5月7日

  • Liz Harkavyはa16z cryptoの投資チームに所属しています。以前はCorsaliのエンジニアであり、FacebookNASA Jet Propulsion Lab、Goldman Sachsでも勤務した経験を持っています。
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  • Eddy Lazzarinは、a16z cryptoのエンジニアリング責任者です。以前は、Netflixでソフトウェアエンジニアとして、また、Facebookではデータエンジニアとしてメッセンジャーの成長分析を担当しました。
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  • Arianna Simpsonは、a16z cryptoのジェネラルパートナーです。暗号通貨とデジタル資産に特化した投資ファンドであるAutonomous Partnersを設立した経歴を持っています。
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翻訳:Takeshi_TGAL